『ザ・バットマン』176分の最大の問題点 “第2作が傑作”シリーズの伝統に続くか
本作の最大の問題は176分というランニングタイムだ。クリストファー・ノーランのダークナイト3部作でも感じたことだが、映画の大半を占めるマフィア絡みのプロットはコミックファンではないバットマンファンの筆者にはさほど関心が持てなかった。犯罪組織の存在は緑色のタイツを着た男やお寒いジョークを言うシュワルツネッガーよりはリアルな危機かもしれないが、名優ジョン・タトゥーロを持ってしても求心力は得られていない。一連の問題が片付いてようやくリドラーに話が戻った時には既に2時間が経過しており、なんだかどうでもいい気分になってしまうのだ(多分、筆者はこの辺で一度、意識が遠のいている)。『ザ・バットマン』は私立探偵を主人公としたノワール映画のタッチを踏襲しているが、ジャンル映画としてもこの長さはありえないだろう。作り手が重要と思っていることが、必ずしも観客にとって重要とは限らない。
とはいえ、マット・リーヴスは過去のDCエクステンデッド・ユニバースとは一切連動しないことで作家性を得ており、アクションシークエンスはやや少ないものの、思わず立ち上がりそうになる場面がいくつかある(バットモービルの轟音!)。俳優陣はシェイクスピア劇もやれそうなくらいの充実ぶりだ。バットマンシリーズは続く第2作が傑作となるのが伝統。次なるヴィランは最後にチラリと現れたヤツか? リーヴスがよりストーリーテリングを研ぎ澄まし、2020年代のバットマン像を構築してくれることを期待したい。
■公開情報
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
全国公開中
監督:マット・リーヴス
脚本:マット・リーヴス、マットソン・トムリン
出演:ロバート・パティンソン、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ゾーイ・クラヴィッツ、ジョン・タトゥーロ、アンディ・サーキス、ジェフリー・ライトほか
配給:ワーナー・ブラザース
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公式サイト:thebatman-movie.jp