『39歳』“不都合な真実”を避けてばかりはいられない人生 終わりに向かうチャニョンに涙

 チャニョンが両親に病気のことを打ち明けた夜、一面に広がる星空はミジョたちにとって“悲しいほどに”綺麗だった。今まで何とも思わなかったランドリーの待ち時間。回る洗濯機の前に座り、ただ待っている“時間”が楽しさに変わったことに涙を流すチャニョン。同じ景色でもどんなフィルターがかかるかによって、見える世界がまるっきり違ってしまう。今まで通り自然に、“上手く”過ごせないのは当たり前なのだ。

 真実を知れば報われるとは限らない。真実を知らないままの方が幸せなこともある。チャニョンの病気やジンソクとの関係、ソヌと妹ソウォン(アン・ソヒ)との繋がり、チャイナタウンのシェフ、パク・ヒョンジュン(イ・テファン)の彼女の本心、そしてミジョの実母を通して描かれた第7話のタイトルでもある「不都合な真実」。彼らに共通していたのは、その真実によって良くないことが起きる予感。これがミジョの言う「不吉な何かを目の当たりにした」なのだろう。

 けれど、「不都合な真実」を避けてばかりはいられない。現に“楽しい旅立ち”を決めてから、楽しいだけでは過ごせないと思い知らされる出来事ばかり。チャニョンに集中したくても、自分たちの思いのまま人生を操作できない。それはきっと、それそれが誰かのために、誰かを想って生きているからだろう。

 ミジョやジュヒがチャニョンに尽くしても「上手くいかない」と落ち込むように、ミジョを守りたいがゆえの一言でミジョを傷つけしまったソヌがいて。施設育ちの養子の自分から抜け出せない苦しみを家族に当たってしまう時、ミジョをいつも優しく抱きしめる姉がいて。想像できない悲しみを我が子の前で耐えるチャニョンの両親がいる。輝きを増しながら成長するミジョを前に実母の存在を言い出せなかったジュヒの母親も、ミジョを大切に思っているからこそだ。 

 チャニョンの“最高のラストを飾る”話から始まった本作。ストーリーが進むにつれ、再生ボタンを押す重さが増している。ミジョたちと同じようにチャニョンが苦しむのを目の前にする恐怖感もある。それでも、彼女たちの軌跡を他人事のようには見逃さずにはいられない。

■配信情報
『39歳』
Netflixにて独占配信中
(写真はJTBC公式サイトより)

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