『劇場版 呪術廻戦 0』北米で初登場No.2 『鬼滅の刃』に続く大ヒットの背景に配給戦略も

『呪術廻戦 0』北米で初登場No.2

 『呪術廻戦』旋風がアメリカの映画館に上陸した。2022年3月18日~20日の北米興行収入ランキングは、おなじみ日本の人気コミック『呪術廻戦』(集英社刊)の初の映画作品である『劇場版 呪術廻戦 0』がなんと第2位に初登場。2340館で上映され、3日間で事前の予想を上回る1770万ドルを記録した。

 このたび北米公開を迎えた『劇場版 呪術廻戦 0』は、コミックの通称「0巻」である『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』をアニメ化したもので、シリーズの前日譚にあたる。かねてより『呪術廻戦』は北米での人気が高く、テレビアニメ版のシーズン1は、日本の優れたアニメ作品を対象とする「Crunchyroll Anime Awards」で2021年に最優秀作品賞を含む3部門を受賞。2022年にはシーズン2も6部門に輝いた。

劇場版 呪術廻戦 0

 また、『呪術廻戦 0』は米Rotten Tomatoesにて批評家スコア100%、観客スコア98%という異例の高評価を獲得。劇場の出口調査では93%がポジティブな評価を下し、81%が「人に薦める」と回答した。観客層は18~34歳の男性が多いものの、12歳以下のキッズ層から特に強い支持を得ている。なお、人種としてはラテン系・ヒスパニック系が32%、白人が25%、アジア系が20%、黒人が17%という分布となった。

 なお、本作の公開にあたっては、ニューヨークのタイムズ・スクエアに巨大広告が掲出されるなど、大々的なプロモーションが行われていた。

 日本のアニメ映画が北米でヒットしたのは、2021年4月に北米公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年)以来。同作はコロナ禍の影響がより大きかった時期に1604館での公開となったが、公開後3日間で2123万ドルを稼ぎ出して初登場第2位を記録。『呪術廻戦』以上に厳しい状況下で優れた成績を打ち出し、1館あたりの平均興収は13156ドルという異様な高さ。第1位の『モータルコンバット』(2021年)との差もわずか200万ドルだった。

 『呪術廻戦』と『鬼滅の刃』のヒットの背景には、日本製アニメの北米配給をめぐるビジネス的な動きも見て取れる。『鬼滅の刃』の配給はソニー・ピクチャーズ&アニプレックス傘下のFUNimation Entertainment、『呪術廻戦』の配給は大手アニメ配信サービスであるCrunchyrollが手がけているが、2021年8月にFUNimationはCrunchyrollを買収。2022年3月からはブランド名がCrunchyrollに一本化された。いまや両作は同じ企業によって配給されており、『劇場版 呪術廻戦 0』は新体制下で初めての劇場公開作品となったのである。

 Crunchyrollは本作の配給に先駆け、前述の通り、テレビアニメ版『呪術廻戦』を自社のアニメ賞で高く評価していた。同賞は審査員とユーザー投票によって受賞作品が決定されるシステムだが、これが自社配給作品のプロモーションと完全に無縁であるとは考えづらいだろう。劇場と配信にまたがり、日本製アニメをヒットに導く“アニメ帝国”が着々と造られつつあると考えても間違いではないはずだ。同社は『劇場版 呪術廻戦 0』を、今後はヨーロッパやオーストラリア、アフリカ、中南米などでも順次展開する予定である。

 ちなみに日本発のアニメ映画としては、細田守監督の『竜とそばかすの姫』(2021年)も2022年1月に北米1338館で公開され、3日間で182万ドルを記録。『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』の勢いには届かずとも初登場第7位という健闘を見せ、北米累計興収は約400万ドルとなった。『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』(2021年)も2021年12月に840館で公開され、初登場で第10位にランクインしている。

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