『SING/シング』の動物たちはステレオタイプを打ち破る 吹替版キャストの歌唱力にも注目

 アニメーション映画『SING/シング』が、3月12日にフジテレビ系『土曜プレミアム』にて地上波放送される。

 本作は、2017年3月に公開されたユニバーサル・スタジオとイルミネーション・エンターテインメントのタッグ作。取り壊し寸前の劇場の支配人であるコアラのバスター・ムーンが、かつての栄光を取り戻すため、たくさんの動物たちに向けた“歌のオーディション”を開催する模様を描く。劇中には、フランク・シナトラ、ビヨンセ、テイラー・スウィフト、レディー・ガガ、スティーヴィー・ワンダーといったアーティストの楽曲が65曲以上使用されている。本作は、興行収入50億円を突破する大ヒットを記録し、2019年にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンに、本作のキャラクターがヒットナンバーを歌い上げるアトラクション「シング・オン・ツアー」が登場。

 さらに、3月18日には本作の続編にあたる『SING/シング:ネクストステージ』の公開が控えている。

 ライターの杉本穂高氏は、本作を一言で表すと「夢を見ることの素晴らしさを教えてくれる群像劇」だと語る。そして、同時期に公開されたことで比較されることの多かったディズニー映画『ズートピア』の名前を挙げ、次のようにコメントした。

「ディズニーやピクサーの作品のように、メッセージ性が全面に押し出された内容ではないので、エンタメとして気楽に楽しむことのできる作品だと思います。主人公のバスターをはじめ、登場するキャラクターたちの行動があまり道徳的ではなく、ディズニーやピクサーとは一味違うブラックユーモアも見どころの一つですね。本作が制作されたのは2016年で、同年には本作と同じく動物の擬人化作品『ズートピア』がありました。『ズートピア』は草食動物と肉食動物の共存の難しさを通して差別とはなにかを描く作品でしたが、物語をわかりやすくするためか、哺乳類しか登場しません、一方、『SING/シング』は魚類も両生類も爬虫類も共存する街が舞台。物語のテーマとして掲げられていませんが、その動物たちの共存しているさまによって、多様性を認め合う社会の大切さを伝えているとも解釈できます。さらに、ティーンエイジャーの女の子・アッシュから、専業主婦のロジータ、中年に差し掛かったサックス奏者のマイクまで、幅広い年代やバックグラウンドのキャラクターが揃っているのも、本作の特徴といえます」

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