小松菜奈×坂口健太郎のリアルさ漂う説得力 『余命10年』は“難病もの”久々の良作に

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、花粉症で、最近ティッシュが手放せない宮川が『余命10年』をプッシュします。

『余命10年』

 『世界の中心で、愛をさけぶ』『タイヨウのうた』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『君の膵臓をたべたい』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』……。ここに数作品挙げただけでも、誰しもがそのタイトルを一度は耳にしたことがあるような作品が並ぶ「難病もの」映画。もちろん日本だけでなく海外でもこの手の作品は数多く作られているが、特に日本映画では2000年以降、ヒットに繋がりやすいという傾向もあってか、1年に少なくとも1本はこのジャンルから話題作、ヒット作が生まれているような印象だ。

 一括りで「難病もの」と言っても、実話をもとにしたものからフィクションまで、製作の経緯や作品の出来も様々だが、特に映画ファンにとっては、「お涙頂戴」的なあからさまな作品の姿勢が煙たがられているのは事実としてあるだろう。その中でも、佐藤健と土屋太鳳を主演に迎え、監督・瀬々敬久、脚本・岡田惠和のタッグで、ノンフィクション書籍を映画化した実話ベースの『8年越しの花嫁 奇跡の実話』は、時間軸の使い方や“映画的”な演出をふんだんに盛り込み、このジャンルの一つの到達点となったのではないかと思う。

 そして今回の『余命10年』は、脚本に岡田惠和が入っていること、タイトルに年数が入っていること、実話をベースにした物語であることなど、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』との共通点がいくつか見られる。

 『8年越しの花嫁 奇跡の実話』もそうだったように、『余命10年』は何よりも小松菜奈と坂口健太郎、メインキャスト2人の映画の中でのあり方があまりにもリアルで、彼らが映画自体にも大きな説得力を与えている。二十歳のときに、数万人に1人という不治の病で自らの余命が10年であることを知り、生きることに執着しないためにもう恋はしないと心に決めた茉莉と、生きることに迷い、自分の居場所を見失った和人。そんな2人を演じる小松菜奈と坂口健太郎の演技は、それぞれのキャリアにおいても過去最高レベルと言えるだろう。無気力で生気のなかった青年が、1人の女性を愛し、次第に夢や希望を得ていく姿。順風満帆だった人生が病のせいで一変するも、愛する人と出会い、自らの生き方に思い悩みながら生きていく姿。そんな2人の“終わり”に向かっていく姿は、涙なしで見ることはできないだろう。

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