林遣都になら騙されてもいい! 『愛しい嘘』のラブサスペンスを成立させた巧みな演技力

 そんなふうにちょっとした表情やセリフの言い回しで二人の違いを見せる林遣都だが、雨宮になりすましていた中野を演じている時でさえも、多重人格さながらの色んな顔で私たちを惑わせてきた。中野が演出する雨宮は少女漫画の王子様そのもの。いつも余裕のある笑みを浮かべていて、一見すると隙がない。誰にでも分け隔てなく優しい一方で、興味のない相手からのアプローチはさらりと交わしたり、手が届きそうで届かない感じがまた女性たちの心に火をつけるのも頷ける。

 それなのに望緒の前では途端に人間味を帯びる理想のシチュエーションを提供してくれた“雨宮くん”。わかり易すぎるほどに怪しく、それを裏付ける噂も続々と飛び出してきたのに、「もう騙されてもいい!」と思わせるほど魅力的だった。彼の何気ない振る舞いに心からドキドキハラハラさせられ、“ラブ”の要素も“サスペンス”の要素も中途半端にならなかったのは、林遣都による巧みな演技力の賜物だろう。雨宮を演じている時の徹底した悪役ぶりもさることながら、自分で塗り固めた嘘に苦しめられている中野役で林遣都は新境地を開いた。

 さて、最終回では本物の雨宮による逆襲が始まる。さらには“雨宮”を優美の不倫相手と思い込み、虎視眈々と命を狙っている正(徳重聡)も逃亡中で、中野は絶体絶命のピンチに。「一つの嘘は、七つの嘘を生む」。そう本人が語ったように、中野はたしかに何度も嘘をついてみんなを騙してきた。しかし、望緒に見せてきた優しい表情や言葉だけは真実だったのではないだろうか。中野が罪を償い、今度は嘘をつかなくてもいいような人生を歩めるように願いつつ、最終回を見届けたい。

■放送情報
『愛しい嘘~優しい闇~』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送
出演:波瑠、林遣都、溝端淳平、本仮屋ユイカ、黒川智花、松村沙友理、新川優愛、徳重聡
原作:愛本みずほ『愛しい噓 優しい闇』
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー :大江達樹(テレビ朝日)、中込卓也(テレビ朝日)、山本喜彦(MMJ)、小路美智子(MMJ)
演出:樹下直美ほか
音楽:横山克
制作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日

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