中学受験シーズン到来 韓国ドラマ『SKYキャッスル』に学ぶ、受験と子供との向き合い方
子供は親の自尊心を満たすアクセサリーなのか
『SKYキャッスル』は、子供の幸せを願う親の物語のようでありながら、親の自尊心を満たすためだけに子供をエリートに育てようとする韓国の学歴至上主義に鋭くメスを入れる問題提起作品だ。
子供は親の言いつけを守り、学校と塾と家の往復だけの生活を送る。反抗することも許されず、たとえ反抗しても真剣に取り合ってもらえない。まるで生き地獄だ。親は優秀な子供を育てれば人生の成功者として周囲から羨望の眼差しをむけられるが、子供は、親を着飾る宝飾品や血統書付きのペットと変わらない扱いをされている。
競争が好きな子供なら良いだろう。努力の成果が数字や内申点評価にあらわれるのはゲーム感覚で楽しい。だが、数字で評価できない自分の人生を歩みたいと考えている子供にとっては不幸かもしれない。本作は、大学受験を軸に、家庭の在り方や本当の親子の幸せを掘り下げようとする。そして、最も重要な「子供の人生は何のためにあるのか」を視聴者に問いかけるのだ。
日本の塾の新学期は2月だと言われている。コロナ禍であきらかになった教育格差や『二月の勝者』に影響されて中学受験させるべく入塾手続きをとっている人も少なくないだろう。だが、親子で方針が固まらず悩んでいるのなら、中受の良い面ばかりでなく、競争社会に身を投じることで発生するデメリットにも向き合った『SKYキャッスル』を観てみてほしい。誰のための、何のための受験なのかが描かれている。
『SKYキャッスル』には、「娘(息子)の成功は母親の責任」という台詞が登場する。これは、母親を呪う言葉だ。呪われた母親たちが、その呪いが発動してしまわぬよう、必死になるのは当然だ。その様子を客観的に、時に自分の考えや状況と照らし合わせながら鑑賞すると、自分の考えが漠然と形成されていくような感覚を覚えるはずだ。
2月を目前にしても、筆者はまだ息子に受験をさせるべきか決心がつかない。塾で受けていた新4年生のための準備講座が終わり、息子は勉強から解放されたことを喜んでいる。こうなると、台所事情だけでなく、子供の受験への適性も懸念事項になってくる。『二月の勝者』に出てくる子供たちのように、それなりのモチベーションがあり、親も受験は課金と割り切れるのなら良いだろう。だが、塾の費用や学費を「高い」と感じている間は、子供が成果を出さなければ「いくら費やしていると思っているのだ」と不満に思う可能性が高い。筆者の性格からして、子供を責めることは容易に想像できる。
小学校の担任は、「偏差値ではなく、彼に1番合う学校を選んであげてください」と言った。息子の授業態度や生活態度を見た上で、競争が得意なタイプではないと判断した上でのアドバイスなのだろう。何はともあれ、筆者は「これ」という答えを導き出せないまま、今でも迷っている。とりあえず、今は一旦深呼吸をして『SKYキャッスル』のハイライトを見直してみようと思う。
■配信情報
『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』
Netflix、Amazon Prime Videoほかにて配信中
(写真はJTBC公式サイトより)