『電脳コイル』から15年 磯光雄監督が『地球外少年少女』で描く宇宙時代の子供たち

 未来を想起させるという点は、『地球外少年少女』も同様だ。磯監督曰く「コンビニにちょっと行って、面白いことが起こったというくらい」に宇宙を身近なものとして描いてはいるが、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の衝突に備え、常に減圧を警戒して暮らす必要があることが感じられる。重力が小さくなることが、日々の暮らしにとどまらず、人間の成長そのものに影響があるかもしれないことを指摘している点にも注目だ。今は夢でも、いつか人類は巨大な宇宙ステーションなり、月面都市なりを築いて移住する。その時に何が起こるのか。物語が考えるきっかけをくれる。

『地球外少年少女』(c)MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

 登矢と心葉が生まれ育った月から離れざるを得なくなった事情。登矢が規則に違反してまでAIを進化させようとした理由。そして、彗星が宇宙ステーションを破壊し地球すら脅かす状況に陥った謎が重なり合って、人類にAIの際限ない発達と向き合う覚悟や、直面している環境破壊への対応などを迫ってくる。全編を観終わった時に人類の一員として今、何をすべきかといった思いが浮かんでくる。そんな作品だ。

 テクノロジーがもたらす未来像を、身近なストーリーに乗せて紡ぐ巧みさは、『電脳コイル』と同様に磯光雄の脚本家としての力量を感じさせる。一方で、ヤサコやイサコやデンスケといったキャラクターに、仕草や表情の豊かさで生命感を与えた演出家としての才知も、『地球外少年少女』でしっかりと発揮されている。人気「宇宙(ソラ)チューバ-」を目指し、所構わず配信しまくる美衣奈の愛らしさや慌てぶりなど、見ているだけで“いいね”を押したくなってくる。

 そうした動きをメインアニメーターとして担ったのは、『電脳コイル』にも参加していたアニメーターの井上俊之。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『おおかみこどもの雨と雪』といった作品に携わり、印象的なシーンを描いてきた腕がどのように発揮されているかを観て感じよう。

■公開情報
『地球外少年少女』
1月28日(金)前編、2月11日(金)後編、新宿ピカデリーほかにて各2週限定劇場上映、Netflixにて世界同時配信
2月11日(金)劇場公開限定版Blu-ray&DVD発売
原作・脚本・監督:磯光雄
声の出演:藤原夏海、和氣あず未、小野賢章、赤﨑千夏、小林由美子、伊瀬茉莉也ほか
キャラクターデザイン:吉田健一
メインアニメーター:井上俊之
美術監督:池田裕輔
色彩設計:田中美穂
音楽:石塚玲依
音響監督:清水洋史
制作:Production +h.
配給:アスミック・エース/エイベックス・ピクチャーズ
製作:地球外少年少女製作委員会
(c)MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会
公式サイト:https://chikyugai.com/
公式Twitter:@Chikyugai_BG

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