ジャンフランコ・ロージ監督最新作『国境の夜想曲』に谷川俊太郎ら著名人が絶賛コメント
2月11日に公開される『国境の夜想曲』に各界の著名人がコメント・イラストを寄せた。
本作は、第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた前作『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』から5年ぶりとなるジャンフランコ・ロージ監督の最新作。
3年以上の歳月をかけて、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影された本作。これらの地域では2001年の9.11米同時多発テロ、2010年のアラブの春に端を発し、直近ではアメリカのアフガニスタンからの撤退と、現在と地続きで、侵略、圧政、テロリズムにより、数多くの人々が犠牲になっている。そんな場所で、ロージ監督は通訳を伴わずにひとり旅を敢行し、そこに残された母親や子供、若者の声に耳を傾け続ける。母親たちの死を悼む哀悼歌、癒えることのない痛みを抱えた子供たち、精神病院の患者たちによる政治の無意味さについての演劇。そこには夜の暗闇から、一条の希望を見出し生きようとする者たちの姿があった。
このたび、本作をいち早く鑑賞した著名人17名からコメント・イラストが到着。ライターのブレイディみかこは「映画というより詩のような、映像というより絵画のような、静かな祈りに満ちた作品」と語る。自身も辺境地域での取材を行うジャーナリストの丸山ゴンザレスは「戦火に巻き込まれた人たちの苦悩の欠片を丁寧に集めた本作。(中略)この映画の意義は大きい」と現地を知るからこその重みある言葉を寄せる。そのほか、詩人の谷川俊太郎や作家の池澤夏樹、歌手の一青窈、漫画家の沖田×華、俳優のサヘル・ローズ、日本のドキュメンタリー作家たちからも称賛の声が寄せられた。
また、イラストレーターの長崎訓子からは印象的な場面をちりばめたイラストが到着した。
著名人コメント
谷川俊太郎(詩人)
「目に見えない真実」「静かな祈り」「未来を見せる」「美しい映画」
悲しい記憶の中に、絵画や詩を彷彿とさせる、豊かな映像美を作家たちが絶賛!
目に見える事実の断片が目に見えない真実に触れている
ブレイディみかこ(ライター)
国境地帯を撮ることで、人間の暮らしや情には国境はないことを描き出す。
映画というより詩のような、映像というより絵画のような、静かな祈りに満ちた作品。
池澤夏樹(作家)
人の世には不幸がある。政治と分断、迫害と逃避。
しかし風景は、時には無残な廃墟の光景でさえ、人の眼を慰め、未来を見せる。
この監督の映像の力である。
小池昌代(詩人・作家)
観終わった後に始まる映画だ。
寡黙で圧倒的な浸透力を持つ映像。
観たことが私の内に深く沈んだ。まるで経験のように。
沖田×華(漫画家)
映像を見ていると。武者小路実篤の「進め、進め」が浮かんできた。
変革なのか侵略なのか今は分からないけど、地に足をつけて信じる道
一寸、一歩でも進んでいけば、きっと答えを見つけることができる――
と感じさせる作品です。
鎌田實(医師・作家)
「無言のポエム」のような映画だ。
戦いに翻弄される人々を撮っているのに……。
暗闇に、いつでもどこでも僅かな光がさしている。
悲嘆の地の一条の光は、コロナ禍で疲れたぼくらの心も癒してくれる。
美しい映画だ。
小森はるか(映像作家)
まったく新しい作風に日本のドキュメンタリー作家たちも舌を巻く
悲劇、美しさ、エネルギー…...海の向こうにある”真実”を刮目せよ!
境界線の周囲に広がる空と大地は見たことのない色をしていた。
言葉よりも先に、起きた現実の鏡のように映し出された色。
これを「美しい」と言って良いかわからない、矛盾した感情と向き合うことをこの映画が教えてくれた。
藤元明緒(映画作家)
少年が見つめる先に私たちは確かに暮らしている。今、世界に対する態度が問われている。どうか目を逸らさないでほしい。悲劇が灯した闇にのまれないように。
日向史有(ドキュメンタリー監督)
少年がソファで毛布に包まる。
彼の寝息はかぼそいけれど、確かに聞こえてくる。
それは深く傷ついてもなお、日々を生きる人間のエネルギーそのものだ。
綿井健陽(ジャーナリスト・映画監督)
これはどこなのか、彼らは誰なのか、そこで何が起きているのか......。
全ては説明されないまま、シーンが展開していく。
しかし、幻想的な映像と静寂な空間に響く音、そして人間の確かな姿と声が浮かび上がる。闇と光が織りなす不思議な映画に吞み込まれた。
一青窈(歌手)
国境地帯の暮らしに差し込む一条の光、
それはジャンルを超えて、人々の心に突き刺さる。
永遠に銃声の響かない夜が来てほしい
星はやさしくいつも瞬き
あたたかく眠れる場所があれば
魂も心も奪い合わないで人はいられるのではないか
この地球で起こっていることを
この映画は静かに、教えてくれました。
サヘル・ローズ(俳優)
空は広くて、不自由。母の嘆き、届かぬ悲痛。
その視線の先には、何があるのか。生きることは幸せ?生き延びたかった?
そんな問いを感じた。美しい映像に宿る、問いかけの息吹き。
貴方には聴こえますか?彼等の言霊が。
丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
戦火に巻き込まれた人たちの苦悩の欠片を丁寧に集めた本作。当事者たちには忘れたいこともあるだろう。
だからこそ消したい記憶を記録したこの映画の意義は大きい。
高木正勝(音楽家)
今もなお傷を抱えながら、でも毎日を生き続けている人間の美しさを、静かに、確かに見せてもらえて、助けられたと感じました。映画が終わった後も、じわじわと勇気をもらっています。
じょいっこ(スパイス系異国メシレビュアー)
ドキュメンタリー映画なのに“物語”の中に迷い込んでしまったみたい。
先の見えない暗闇の中で奏でられる生活者たちのメロディのない夜想曲。
枝元なほみ(料理研究家)
夜明けの美しさに予期せぬ哀しみが込み上げるような、切ない映像でした。
胸の底にすうっと沈んだいくつもの場面を
私、きっと何度も何度も思い出します。
長崎訓子 (イラストレーター)
ざらりとした手触りの紙に、夜は丁寧に塗り重ねられて朝は粒子まで描き込まれている。ただ見つめるだけでいい、と言われた気がした。
■公開情報
『国境の夜想曲』
2月11日(金・祝)Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督・撮影・音響:ジャンフランコ・ロージ
配給:ビターズ・エンド
イタリア・フランス・ドイツ/2020年/104分/アメリカンビスタ(1:185)/アラビア語・クルド語/原題:NOTTURNO
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