4月には劇場版も公開 改めて振り返る『オッドタクシー』ブレイクの軌跡と3つの魅力

 もちろん多くの人を夢中にさせた物語の魅力も、このヒットを語るのに欠かせない。タクシードライバー・小戸川を主人公としたどこか不気味な雰囲気の群像劇から徐々にミステリーテイストが強くなり……未見の人のために詳細の記述は避けるが、さまざまな伏線が回収される終盤の怒涛の展開を2021年アニメのハイライトのひとつとして挙げることに異論がある人は少ないはずだ。本作の脚本を手掛けたのは、おもにマンガ家としても活躍してきた此元和津也。ドラマ化や映画化もされた代表作である『セトウツミ』でも、『オッドタクシー』の物語と似たテイストは味わえる。本作のファンで未読の方はぜひ手にとってほしい。

 また群像劇をより楽しく魅せるための演出も際立っていた。決して動きまくるわけではない、ややダウナーな会話中心のアニメだが、ラッパーを声優に起用したキャラクターのラップ調の発言や芸人キャストによる漫才のような会話、作中のアイドルグループ・ミステリーキッスの楽曲といった飛び道具が視聴者を飽きさせない。さらに本編と同時にYouTubeで展開されたオーディオドラマ(特に最終回は必聴!)やアニメ開始の半年も前から始まっていた樺沢のTwitterアカウント(@kbsw_t)など、作中外にも驚きの仕掛けが用意されていたのも印象的だ。

【#オッドタクシー】オーディオドラマ第1.3話「幸せのボールペン」

 4月1日に公開予定の『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』は、TVアニメのエピソードを再構成しつつ最終回のその後も描かれることが発表されている。あれだけ見事な構成の物語を楽しませてくれた作品だけに蛇足を懸念する声もSNS上では見られるが、ここまで巧みに演出された『オッドタクシー』だけに、映画でも新たな驚きを提供してくれることに期待してもいいだろう。未見の人はもちろんだが、その驚きを存分に味わうために、すでに作品を観ている人も改めて極上の“2周目が面白い”物語を楽しんでみてはいかがだろうか。

■公開情報
『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』
4月1日(金)全国公開
花江夏樹、飯田里穂、木村良平、山口勝平、三森すずこ、小泉萌香、村上まなつ、昴生(ミキ)、亜生(ミキ)、ユースケ(ダイアン)、津田篤宏(ダイアン)
企画・原作:P.I.C.S.
脚本:此元和津也(P.I.C.S. management)
監督:木下麦(P.I.C.S.)
アニメーション制作:P.I.C.S. × OLM
配給:アスミック・エース
製作:映画小戸川交通パートナーズ
(c)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ

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