『劇場版 呪術廻戦 0』はアニメ映画の学びになる作品に 原作に忠実だからこそ生まれた歪み

『呪術廻戦 0』に生まれた構造上の歪み

 『劇場版 呪術廻戦 0』が快進撃を続けている。公開初日に配給の東宝が興行収入100億円超えは間違いなしと発表したほか、多くの原作ファン、アニメファンからも作品に対して好意的な声が続いている。2021年末から2022年にかけて、苦しい日々が続いた映画興行には嬉しい声ではないだろうか。

 今作は特に漫画原作の忠実な劇場アニメ化を果たしていることでも話題になっているが、そのことによって構成の難しさを感じた部分もある。今回は漫画原作とその映画化の構成について考えていきたい。

 『週刊少年ジャンプ』で連載されている漫画の劇場アニメ化作品の場合、大きく分けて以下の2つに分類される。

(1)原作漫画をそのままアニメ映画化した作品
(2)原作にはない敵やキャラクターを中心にオリジナルストーリーを展開する作品

 (1)に分類されるのは今回ピックアップした『劇場版 呪術廻戦 0』や『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のような、連載漫画をそのまま映像化する作品だ。近年はこのタイプの作品が大ヒットを記録しているが、ジャンプ漫画としては決して主流派ではない。

 むしろ主流と呼べるのは『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』や『ONE PIECE STAMPEDE』『ドラゴンボール超 ブロリー』などのような、原作の展開とは別のオリジナルの敵や仲間が登場する、スピンオフのような作品である。

 この2つを比べた場合、物語構成に大きな差ができる。例えば1のタイプの作品としては『銀魂 THE FINAL』が該当するが、こちらは物語の最終局面をアニメ化している作品だ。そのため、映画序盤にそれまでの物語が説明されるものの、基本的にはここまで原作やアニメを追いかけてきたファンのための物語となっている。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に関しても、あくまでも原作の1エピソードの映像化であり、原作やアニメを観ていることが前提として制作されている。

 これらの作品の場合は、『鬼滅の刃』の原作であれば7巻から8巻付近の物語を追うことになるため、今作からシリーズに入るには多少のハードルがあることは割り切らなければならない。

 その点、今回の『劇場版 呪術廻戦 0』はこのハードルをうまく乗り越えたといえる。原作の前日譚にあたるだけでなく、『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』は本誌の前に『ジャンプGIGA』にて短期連載された作品であるため、テレビアニメを観なくても理解ができるどころか、むしろ本作から作品に入ることが一種の正解とも言えるのだ。その点において、他の原作を映画化した作品とは一線を画したハードルの低さが特長の1つと言えるだろう。

 ただし、それでももう1つのハードルがあることは指摘しておきたい。それは連載漫画のテンポと、劇場版アニメのテンポは異なるという点だ。例えば『劇場版 呪術廻戦 0』は大きく分けると全4章で構成されている。

1章 導入から小学校でのバトル
2章 訓練と商店街のバトル、強力な敵である夏油の登場
3章 夏油の襲撃と百鬼夜行の始まり
4章 戦いの終盤と後日談

 上記のような構成だが、原作漫画としては1話ごとに序章→戦闘→次回への引き、といったような形で構成されており、1話1話が見事にまとまっていながらも、次回にはさらに大きな展開が待ち受けており1巻完結の漫画として高い完成度を誇ると感じられた。これが連載漫画のテンポならば文句はないのだが、このまま映画化してしまうとそこに疑問が生じてしまう。

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