特撮リバイバルブーム到来! 日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』を今観るべき意義

 『サンダーバード』(1965年)という海外テレビ作品をご存じだろうか? 事故や災害から人々を救助する国際救助隊の総司令官ジェフ・トレーシーと、5人の息子たちが操縦するスーパーメカの活躍を描いたイギリスの特撮番組だ。実写映画版(2004年)が公開されたり、全編3DCGで制作されたアニメ版『サンダーバード ARE GO』(2015年)がテレビで放送されたので、そういったリメイク版を通じてタイトルを知っている若い人も多いだろう。その『サンダーバード』が、1965年当時の技術を再現した新作映画『サンダーバード55/GOGO』として蘇り、2022年1月7日に全国ロードショー公開、1月8日よりオンライン上映される。

 マリオネット(人形)とミニチュアを使って撮影された“スーパーマリオネーション”の『サンダーバード』は、イギリスの映像プロデューサーであるジェリー・アンダーソンが製作したテレビ番組。巨大感を持たせた精巧なミニチュアの撮影技術は目を見張るものがあり、『2001年宇宙の旅』(1968年)や、『エイリアン』(1979年)、『スター・ウォーズ  エピソード5/帝国の逆襲』(1980年)といったSF映画の特撮に影響を与えた。またイギリスで『サンダーバード』の撮影現場を見学した円谷英二は大いに刺激を受け、『ウルトラセブン』(1967年)、『マイティジャック』(1968年)などでスーパーメカの発進場面に力を入れたほどである。60年代はジェリー・アンダーソンの企画・製作で、『海底大戦争 スティングレイ』(1964年)、『キャプテン・スカーレット』(1967年)、『ジョー90』(1968年)といったスーパーマリオネーション作品が相次いで海外で放送され、日本にも次々と上陸した。中でも『サンダーバード』は日本のサブカルチャー分野の多くのクリエイターたちが、幼少期に観て大きな衝撃を受けたという。新作、日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』のオフィシャルサイトに期待コメントを寄せている漫画家の江口寿史、メカデザイナーの河森正治、ゲームクリエイターの小島秀夫という面々を見ても、いかにこの世代が『サンダーバード』に憧れ、今回の新作に期待をかけているかが分かろうというものだ。

 さて、その日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』の元となる3つのエピソードは、オリジナル版の50周年記念となった2015年に、海外のクラウドファンディングで新作プロジェクトが呼びかけられた結果、出来上がったものだ。60年代当時にオリジナルキャストの声で収録された3篇のドラマレコードをベースに、『サンダーバード登場』、『雪男の恐怖』、『大豪邸、襲撃』の映像作品が作られている。かつてのテレビドラマ版と同じく伝統的なスーパーマリオネーション技術で撮影されたのも、今回のスタッフのこだわりポイントだ。これら3篇の物語を1本に編集したものが日本語劇場版だが、構成はサンダーバード世代の樋口真嗣が担当する。イントロダクションや各エピソードの幕間に樋口による楽しい仕掛けがあり、初めて本作に触れる若い世代も楽しめる内容となっている。また、庵野秀明が25歳だった頃、初めてプロとして編集・構成に関わった『サンダーバード』のハイライト集ソフト『ザ・コンプリート・サンダーバード』(1985年)が、2022年『シン・コンプリート・サンダーバード』のタイトルでBS10 スターチャンネルが独占放送することも発表された。フィルム倉庫に眠っていた当時の映像に修復とHDリマスターを施し、さらには修復されたリマスター音源をあて、再び庵野氏の構成・編集のもと、新たに生まれ変わらせたもので、庵野自身が『シン・コンプリート・サンダーバード』というタイトルを命名した。

 樋口真嗣と庵野秀明といえば、『シン・ゴジラ』、『シン・仮面ライダー』、『シン・ウルトラマン』と、2016年から2021年にわたって発表された「シン・○○○」シリーズは、必ずどちらか、あるいは両名が監督として参加しているのが特徴だ。ゴジラも仮面ライダーもウルトラマンも、50年以上の歴史を持つ特撮キャラクターだが、いよいよ海外作品の『サンダーバード』55周年プロジェクトにも、この2人が同じタイミングで関わることとなった。往年の名ヒーローたちを新たな解釈で再構築し、現代に復活させてきた両名が、数多くの特撮作品の源流と言っても過言ではない『サンダーバード』に揃って参加するのは大きな意義があるといえるだろう。

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