吉高由里子が振り返る『最愛』との歩み 「楽しんだ分だけ自分の中に深く刻まれていく」

吉高由里子が振り返る『最愛』との歩み

「自分が1番楽しんでやろう」

――そんな新井プロデューサーをはじめキャストの方々から「吉高さんが現場を明るくしてくれた」というお話がありました。ご自身で意識されていた部分はあるのでしょうか?

吉高:自分が1番楽しんでやろうっていう気持ちは常にありましたね。楽しんだ分だけ自分の中に深く刻まれていくと思うし、たくさん取り入れたい作品だと思っていたので。今回、本当にキャストのみなさんもスタッフさんも和気あいあいとしていて。全体的にいつも和やかな空気だったので、すごく居心地が良かったです。

――後藤専務役を演じた及川光博さんのインタビューでは、吉高さんの「本番とカットがかかった瞬間の切り替えがすごい」というお話もありました。

吉高:いやいやいや、私から言わせてもらえば「ミッチー、あなたもね!」って! 落ち込んでる後藤さんモードかと思ったら、カットかかった瞬間にみんなの知ってるミッチーになっていましたからね(笑)。切り替えか……たぶん、もともと悲しいシーンで悲しさに浸っていくやり方をしてこなかったかもしれないですね。本番とカットがかかったら切り替えようっていうのは自分で決めたルールではないですけど、無意識のところで自分に落とし込んだスイッチの入り方なのかなと。きっと瞬発力タイプの女優なんですよ。

――では、共演シーンの多かった松下さんの印象を改めてお聞かせください。

吉高:大輝は、無骨さの中に可愛らしさや寂しさ、刑事として梨央に関わっていく葛藤も、すごく複雑な感情を持って演じなければならない難しい役どころだったと思います。それでも梨央との愛を育もうとする姿を松下さんが演じられたことで、すごく魅力的になりましたよね。「大キュン」っていう言葉ができちゃうくらい(笑)。松下さんの声自体もホッとするような、帰ってきた感じのあるような優しい声なので、その声の大輝にも寄りかかって甘えていたり支えになってもらったりする部分もあるのかなと。梨央も社長なのにああいうマンションに住むような素朴なところを大事にしている人なので、“カッコいいカップル”というより“小さな幸せを見つけるのが上手な2人”だなと思っていました。

――梨央と大輝のシーンで、印象的だった場面はありますか?

吉高:演じながら「感じ悪いな私」って思ったのは第1話と第2話の最後ですね。梨央が重要参考人として大輝と対峙する場面だったんですけど、「よく、そんな顔して『はじめまして』って言えるな!」と心の中でツッコまずにはいられないくらいヒリヒリしました(笑)。あと第5話も苦しかったです。優(高橋文哉)が連れて行かれちゃうところで、大ちゃんが後輩に頭を下げてその場をつないでくれるっていう、梨央と大輝と優の3人の関係性が出たように感じました。あとは、ラブでいうと歩道橋からの追いかけっこかな。「みんなこういうのが好きなんでしょ?」って思いながら(笑)。

――(笑)。では、そんな「大キュン」に対抗するように「加瀬キュン」という言葉を生み出した加瀬さん演じた井浦さんについてはいかがでしょうか?

吉高:加瀬という役の愛情というか、懐の大きさが回を重ねるごとにどんどんどんどん大きくなっていって、すごく包まれている感覚がありましたね。新さんとはもともと面識があったので第1話から安心感がありましたけど、それに輪をかけて包み込む愛情が見えて、温かくて優しい加瀬というキャラクターになっていったなと思いました。

――今回、梨央の弟・優を演じた高橋文哉さんについては?

吉高:文哉くんは「本当に20歳なの?」っていうくらい落ち着いている部分もあれば、ピュアでまっすぐで素直なところもあって。舞台裏の様子も、みんなに地上波で見せたいくらいかわいくて! 本当はもっとしっかりしている部分もあるのかもしれないけど、甘え上手さも人懐っこさもあったり、私が今まで経験したことのない“弟がいるお姉ちゃん”という気持ちにさせてくれたのも文哉くんの力だなと思います。

それぞれの“最愛”の形に胸がワッシャワッシャ!

――改めて『最愛』と共に駆け抜けたこの3カ月間を振り返っていかがですか?

吉高:みんなといた時間が濃すぎて、白川郷で撮影したのが何年も前に感じられるくらいです。たった1クールの作品とは思えないほどすごく密度の高い作品だったので、終わってしまう寂しさはもちろんあります。けど、それだけこの現場が体の細胞の中にまで入ってきたというか、のめり込むことができたんだなって思いますね。寂しい分、大きな嬉しさになりつつあります。みんなが愛情を込めて作った作品だし、自分も梨央と共に年を重ねたような気持ちにもなったし。“吉高由里子”が演じているのではなくて、本当に“梨央”という人間がそこにいたんじゃないかって思えるくらいの作品になったと思っています。

――ドラマの中で15年という時間が流れて、無垢な少女から信念を持った大人の女性まで演じられてきましたが、吉高さんはどういったキャラクターやシーンが演じやすいというのはあるのでしょうか?

吉高:やっぱり美味しいものを食べているときが、1番素直な顔だと思いますよ(笑)。鉄板焼屋の「峰」さんのシーンで、もんじゃ焼きを頼むのにいつも食べられないから「この現場が終わったら絶対もんじゃ食べに行く」ってマネージャーさんと話してるんですよ! 悲しいも嬉しいも喜怒哀楽が表に出たほうが観ている人には伝わりやすいんですよね。でも、本当は悲しいのに普通の顔をしていたら伝わらないじゃないですか。だから、むしろ表に出しやすい感情こそ、どの程度顔に出していくのかっていうところは難しいなと感じています。

――梨央の人生は苦しい場面もたくさんありましたが、演じられていて辛くなることはありませんでしたか?

吉高:そこはフィクションという事実に救われましたね。これが誰かの実話を基にしているお話だったら、余計に辛くなっていたかもしれないです。ただ、たしかに苦しい物語ではあるんですが、撮影しながら台本の話をしていくと、やっぱり愛ゆえの物語だと思いますし、だからこそみんなで愛情を込めて作っているっていうのもありました。悲しいシーンは愛情を感じるからこそ悲しくなる。それをどうしたらより響くかなって自分が悲しいと感じる部分を引っ張り出して演じる部分もありました。塞ぐのではなく、広げていくイメージで。そういう点でも、本当に勉強になる作品でした。

――残すところ最終話のみとなりました。オンエアを楽しみにしている視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

吉高:みんなの愛が詰まっている第10話になっています。誰がどんなふうに梨央を守ろうとしたのか。それぞれの“最愛”の形に、みなさんの胸がワッシャワッシャってなってしまうと思いますので、心して観てください!

■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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