『カムカム』安子の涙に込められた稔への思い すべての人への祈りが込められた第6週
ロバート(村雨辰剛)にある場所に連れてこられた安子(上白石萌音)。ドアを開けるとそこには小さなアメリカとも呼ぶべき、進駐軍のクラブが広がっていた。「戦勝国」「お父さんを殺した国」。目の前に見える現実に安子の心の底にあった猜疑心が一瞬で憎悪へと膨れ上がる。ただ、ロバートの目的は安子の受け取ったメッセージとは逆のものだった。
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第6週「1948」に大きく連なっているテーマは、稔(松村北斗)亡き今、安子はなぜ英語を勉強しているのかである。その悲痛な英語での問いかけにロバートは安子を進駐軍のクラブに連れてきた。クラブから聴こえてきたのは「Silent night」。日本では「きよしこの夜」としてもクリスマスに歌われている賛美歌だ。
戦勝国と言えど、アメリカでも多くの人々が命を落とした。ロバートの妻もその一人。クリスマスという大切な人のことを思う日に、彼らは自身の家族だけでなく、日本人に対しても祈りを捧げているのだとロバートは伝える。
ロバートが亡き妻との馴れ初めを安子に日本語で伝えるシーンは、第29話での安子の英語での長ゼリフのアンサーのようにも感じられる。ロバートがなぜかつての敵国に来てまで、進駐軍の将校として街の復興に尽くしているのか。それは今の仕事、任務が亡き妻との出会いに通じているからだ。
「私にとって英語を勉強することは夫を思うこと」──安子の中ではすでにその答えは出ていたはずだ。稔との出会いがなければ、英語とも出会わなかった。そして、稔と出会ったから、安子は今日も生きている。安子の迷いを払拭し、ひなたの道へと歩き出す後押しをする役目にロバートはいる。それがきっと稔の願いだったはずだと。