『二月の勝者』は“子役のため”に用意された作品? 柳楽優弥ら大人側のキャスティングの妙
とりわけ興味深いのは、そんな子どもたちと向き合う大人側のキャスティングの妙である。柳楽といえば、子役を輝かせる技術に長けた是枝裕和監督の『誰も知らない』でデビューを飾り、カンヌ国際映画祭男優賞を受賞した世界的な元天才子役だ。また、柳楽演じる黒木に振り回される佐倉麻衣を演じる井上真央は、幼少期から子役として経験を積み、当時小中学生の間で大ブームを巻き起こした『キッズ・ウォー〜ざけんなよ〜』(TBS系)を機に国民的女優へと上り詰める。そして黒木に執着する灰谷純役の加藤シゲアキは、小学6年生でジャニーズに入所し、『3年B組金八先生』の生徒役に出演するという王道を経験している。まさに塾講師として子役の前に立つ彼らが、次の世代に向けた道を切り拓くという構図が完成しているのだ。
さらに黒木の元教え子として登場する大森紗良役の住田萌乃は、『スカーレット』をはじめとした映画やドラマ、さらにはFoorinのメンバーとして、すでに子役から次のステップへと進み始めた逸材だ。それだけに、実年齢でいえば前述の羽村よりも年下でありながら高校生の役として“先輩”としての貫禄を見せつけていく。また生徒たちの親を演じるゲストキャストも、『学校の怪談』シリーズで子役たちを見守ってきた西田尚美をはじめ、子役出身の星野真里や岩崎ひろみ、学園ドラマ出身の塚本高史らが登場したりと、31名の子役たちを育てる環境としては至れり尽くせりではないか。
現実的な話として、子役から大成する俳優というのは一握りである。それは以前のように作品面で段階的にバックアップするレールが整っていてもそうだっただけに、現在のような環境下ではなおさらであろう。とはいえ、前述したように“若手俳優の戦国時代”は、子役から大成するという長い階段の途中にかなり広く充実したもうひとつのチャンスを与えてくれるというメリットがある。むしろそれは、学園ドラマが少ない状況だからこそ、早い段階で頭角をあらわしたほうが有利であることは言うまでもないだろう。2010年代前半に天才子役といわれた芦田愛菜や鈴木福、桜田ひより、加藤清史郎らがそれを裏付けている。その世代を追うのが、寺田心や住田萌乃、そして『二月の勝者』の生徒たちといったところか。
密集した環境での撮影への制約が大きくなった昨今、かつてのように子どもたちを扱うこと以外の難しさが出てきてしまっている“教室ドラマ”。それでもこれを機に次の世代へと目を向ける機会となる作品が増えてくれれば、映画やドラマはもっとおもしろいものになる。
■放送情報
『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:柳楽優弥、井上真央、加藤シゲアキ、池田鉄洋、瀧内公美、今井隆文、加治将樹、住田萌乃、岸部一徳ほか
原作:『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』高瀬志帆(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
脚本:成瀬活雄
音楽:小西康陽
主題歌: DISH//「沈丁花」(ソニー・ミュージックレコーズ)
テーマソング:NEWS 「未来へ」(Johnny’s Entertainment Record)
演出:鈴木勇馬ほか
プロデューサー:次屋尚、大塚英治(ケイファクトリー)
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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