MCU『ホークアイ』軽快に進んだ前半戦 ケイト×クリントのコミュニケーションが魅力に

 11月24日、ディズニープラスオリジナルドラマ『ホークアイ』の配信が始まった。アベンジャーズのなかでも、あまり目立たないポジションにいた彼の活躍を心待ちにしていたファンも多いだろう。ヒーロー“ホークアイ”の名が継承される過程を描くと言われているこのドラマ。全6話中、配信された前半3話の内容を振り返っていこう。

第1話「憧れのヒーローには会うもんじゃない」ケイト視点で始まる物語

 時は2012年。アベンジャーズがニューヨークでチタウリと戦っていたときに悲劇は起きる。幼いケイト・ビショップは、この戦いで父デレク(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)を失い、家が半壊。しかしこのとき、彼女は自分の運命を変える相手の姿を捉える。壊れた壁の外に見えたホークアイだ。そして彼女は父の葬儀で、母エレノア(ヴェラ・ファーミガ)に「弓矢が欲しい」と言うのだった。ケイトはここから、ホークアイのようなヒーローになることを夢見て歩みはじめることになる。

 オープニング映像では、ケイトがアーチェリーをはじめ、空手やフェンシングなど、多くの武術に触れて成長していったことが簡潔に説明される。ときに敗北を経験しながら、彼女は徐々に実力をつけていったようだ。それはまるで、生身の人間でありながら超人やアーマースーツを身に着けた天才科学者に混じって、アベンジャーズの一員として活躍したクリントのようでもある。

 そしていよいよ成長したケイト・ビショップ(ヘイリー・スタインフェルド)の登場だ。ここで彼女は、まさに“ホークアイ”の名を継承するにふさわしい弓矢の能力を見せつける。かと思えば、やりすぎて大問題を起こしてしまった。彼女はその少しおっちょこちょいな性格や、表情のキュートさで観る者の心を一瞬にして射抜く。ヒーローになるにはまだまだ未熟なケイトだが、魅力はたっぷりだ。クールで落ち着いたクリントと正反対の彼女が、一体どんな“ホークアイ”になるのか期待させる。

 一方、ホークアイことクリント・バートン(ジェレミー・レナー)は、3人の子どもたちとクリスマスのニューヨーク旅行を楽しんでいた。彼らが鑑賞していた『ロジャース:ザ・ミュージカル』は、アベンジャーズのニューヨークの戦いを描いたものらしく、ミュージカルの王道中の王道といった演出で視聴者の笑いを誘う。しかし客席のクリントの目に映るのは、亡き親友ナターシャを演じる俳優の姿。娘ライラ(エヴァ・ルッソ)に呼びかけられた彼の耳には、補聴器がつけられている。長年ヒーローとして戦ってきた彼は、身も心もボロボロになってしまったのだろう。今の彼は家族との時間を取り戻し、なによりも子どもたちと触れ合うことを望んでいるのだ。そんな彼の優しい普通の父親としての素顔は、これまでにも『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』や『アベンジャーズ/エンドゲーム』の冒頭でほんの少し垣間見ることができたが、今回はそれがしっかりと描かれている。特にライラとのやり取りには、彼の家族への深い愛情と彼らと平穏に暮らしたいという切実な思いが見て取れる。「クリスマスを家族と過ごす」、これが本作での彼の最重要ミッションなのだ。

 しかしもちろん、話はそう簡単に進まない。ケイトが闇オークションの会場から持ち出したローニンのスーツに身を包み、謎のギャングと戦ったことでクリントの計画は狂ってしまう。裏社会の制裁人ローニンとして活動していたころのこのスーツは、彼にとって“黒歴史”を思い出させる品だ。できれば葬り去ってしまいたいし、ほかの誰かが身につけて活動するなど、もってのほかだろう。そして彼は、スーツの持ち主を追う。

 こうしてケイトのキャラクター性と、『エンドゲーム』後のクリントの状況や心境が丁寧に描写され、2人の出会いで第1話は幕を閉じた。ヘイリー・スタインフェルドが演じるケイトは、良くも悪くも恐れ知らずで、今どきの若者らしい魅力を放つ。一方、彼女の周りでは、おそらく母の婚約者ジャック(トニー・ダルトン)を中心に、不穏な動きが見られる。クリントはそれに巻き込まれるかたちで仕方なくヒーローに復帰するのだろう。家族とクリスマスを過ごすため、さっさと事態を収拾させたい彼にとって、ケイトは少し面倒な存在だろう。2人の関係は、これからどうなっていくのだろうか。

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