『青天を衝け』橋本愛だから体現できた千代の優しさと強さ 今までにない吉沢亮の表情も

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)の最終回までいよいよ1カ月余り。これまでを振り返ると、栄一(吉沢亮)にはかけがえのない恩人や家族といった多くの別れがあった。市郎右衛門(小林薫)やゑい(和久井映見)に関しては覚悟した上で思いを受け止め前に進んで行くものだが、円四郎(堤真一)とは思いもよらない突然の別れとなった。今回の千代(橋本愛)もその後者にあたる。

 第36回「栄一と千代」では、千代がコレラに感染し息を引き取る。「虎列刺アリ ハイルベカラズ」という張り紙で、子供たちを遠ざけて千代を寝室に隔離。最期は栄一のみが看取る形となった。『青天を衝け』は30分過ぎから事態が急変することが多々あるが、今回もその構成。急性腸炎のコレラにかかると、数時間のうちに死亡するケースもあるというが、劇中でも千代はあっけなく亡くなってしまう。火葬の炎の前で立ち尽くす栄一。千代のいないガランとした茶の間を振り返る栄一の表情は、見たこともないほどに憔悴しきっている。それほどまでに千代の死は突然だったのだ。

 だが、千代はこの世を去る前に家族へと思いを受け継いでいる。「生きてください……必ずあなたの……道を……」ーーそう言って死に行く千代は栄一の胸に触れた。それは栄一の心根は昔のままだというサイン。幼い頃に見た異人相手に商いをする夢を堂々と栄一は叶えている。迷ったとしても、間違ったとしてもいい。栄一の信じる道を進んでほしい。それが妻として全てを受け止めてきた千代の最後の願いだった。

 千代は、うた(小野莉奈)と穂積陳重(田村健太郎)の結婚を見届けるようにして亡くなっていった。「これでこの世に思い残すことはありません」という冗談のようなセリフが、まさか現実のものになるなんて。陳重に両親を紹介する口調にも表れているが、うたが見てきたのは栄一を支える妻としての姿。さらに養育院で恵まれない子供たちに接する慈悲深い愛情を、うたは受け継いでいるはずだ。それはまだ幼き篤二ら渋沢家の子供たちや養育院の人々にも。

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