綾野剛イヤーが続く2020年代 ドラマに映画、トップギアで走り続けるその魅力と役者人生

 現在放送中のピカレスク・エンターテインメント『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)での縦横無尽な演技力が話題となっている綾野剛の快進撃が止まらない。昨年大ヒットした『MIU404』(TBS系)で高く評価され、今年は『ホムンクルス』含めた主演映画が2本公開&3本のドラマに出演、さらに来年にはNetflixシリーズ『新聞記者』(2022年1月13日より配信)も控えるが、このほとんどで主演を務めているのだ。そこで今回は、トップギアで走り続ける綾野の魅力とその役者人生について振り返ってみたい。

 実はこの爆走ぶりは今に始まったことではない。綾野はモデルや音楽活動を経て、2003年に『仮面ライダー555ファイズ』(テレビ朝日系)の澤田亜希/スパイダーオルフェノク役で俳優デビュー。キャンドル・アーティストの青年を演じた長編初主演作『Life』 (2007年)では、楽曲も担当している。当時の彼は長髪の中性的な魅力を備えた若手イケメン俳優で、『クローズZERO II』(2009年)でのキレたら手がつけられない不良役の振り切った演技で新境地を開拓する一方、小栗旬の初監督作『シュアリー・サムデイ』(2010年)では “狙った女性を5秒間見つめるだけでオトせる男”というセルフパロディ的な役柄を好演した。

 そして俳優人生の転機となったのが、連続テレビ小説『カーネーション』(2012年/NHK)だ。綾野は妻子がありながらもヒロインと恋に落ちる仕立て職人・周防龍一役を演じ、3週間のみの出演だったのにもかかわらず、お茶の間の女性たちはこぞってその朴訥な佇まいにヤラれてしまった。この作品を皮切りに、同年は『クレオパトラな女たち』(日本テレビ系)に同性愛者役で出演したほか、映画においては沢尻エリカ主演作『ヘルタースケルター』ほか出演した7本の映画が公開ラッシュ状態に。

 また2013年も大河ドラマ『八重の桜』(NHK)ほか5本のドラマが放送&4本の出演映画が公開され、うち『横道世之介』(2012年)と『夏の終わり』で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞している。

『怒り』(c)2016映画「怒り」製作委員会

 この頃から綾野は毎年複数の作品に出演し、今日まで続く“カメレオン俳優”としての道をひた走ってきたわけだが、その人気の秘訣は妥協なき演者としての姿勢だろう。『Life』で内面から作り込むため役柄をイメージした衣装を着て一か月間暮らし、ゲイカップルを演じた『怒り』(2016年)では相手役だった妻夫木聡と2週間同棲生活をするなど、デビュー当初からその入念な準備は定評があった。謎の花によって運命を狂わせていく植物学者を演じた『シャニダールの花』(2012年)の鬼才・石井岳龍監督にして「役柄が憑依する役者」と言わしめた彼の役への没入ぶりは、その後に村上虹郎と共演した『武曲 MUKOKU』(2017年)の心に傷を抱える剣道5段の主人公・矢田部研吾役での見事な肉体改造からも明らかだろう。

関連記事