『真犯人フラグ』新キャラ登場でさらに波乱? どんどん怪しい桜井ユキ演じる朋子の行動

 凌介(西島秀俊)の家に飛び込んできたサッカーボールと、朋子(桜井ユキ)の部屋の押し入れに隠された“何か”。毎話大きなフラグを立てたところでエンディングを迎える『真犯人フラグ』(日本テレビ系)だが、それをすぐには回収しないあたり巧妙である。11月14日に放送された第5話では、サッカーボールの件をひとつの軸として物語を運ぶ反面、それについての手掛かりは何も得られず。また押入れの件はほぼノータッチのまま、朋子というキャラクターの怪しさだけがとことん積み重ねられていく。もっとも、『あなたの番です』(日本テレビ系)の例を踏まえれば、序盤で一番怪しい人物は犯人ではない。そこに気を取られている間に、何か重要な伏線が隠されているのかもしれない。

 サッカーボールが篤斗(小林優仁)のものであると確信した凌介。その話を聞かされた瑞穂(芳根京子)は、これまでのローファーや冷凍遺体とやり口が違うと指摘する。そんな中、瑞穂は一星(佐野勇斗)から呼び出され、同盟を組みたいとの提案を受けることに。一方、YouTuberのぷろびん(柄本時生)は凌介が事件直前に家族旅行をキャンセルしていたという情報を拡散。またしても凌介への悪評が増えることに。そして自宅謹慎中の凌介は、ドライブレコーダーに映った真帆(宮沢りえ)たちの姿にある違和感を感じるのである。

 「正義中毒」という言葉が今回のエピソードの大きなキーワードであろうか。サッカーボールの件を話に警察署を訪れた凌介が、帰りしなに瑞穂に電話をかけている最中、突然やってきた男性が罵りながらゼリーをかけてくる。世の中で“悪”と認識される人物に対し、一方的な正義感で罰を与える。それによって脳からは快楽物質が出て、それが癖になってまた誰かを罰したくて仕方がなくなる。これは前回のエピソードでも瑞穂の口から語られた「沈黙の螺旋理論」と同じく、SNS上で頻繁に見受けられる典型的な現代病といえよう。

 とりわけ現実社会においても、この「正義中毒」は社会問題化しているわけだが、劇中で瑞穂が「正義中毒は酔っ払いと同じ。まともな対話はできません」と一蹴する言葉は非常に的を射ているように思えてしまう。また、一星が瑞穂との会話の中で言う「好きなことがないと不安になる」との言葉や、阿久津(渋川清彦)が落合(吉田健吾)との会話の中でつぶやく「わからないって、普通怖いだろ」という言葉もまた、SNS社会ないしは情報社会を生きる現代人に広く刺さる言葉であろう。トリッキーな展開が目立つミステリー描写の中に随所に挟み込まれるこうした的確な指摘が、このドラマの背骨となっていることがよくわかる。

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