松村北斗、『カムカムエヴリバディ』稔はこれまでの役と違う? 存分に発揮される演技の才

 放送開始2週目にしてかなりイレギュラーな構成が光った第8話と、そこから連なる第9話、第10話は、現在放送中のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の第1パートである「岡山編」において、いわゆる“相手役”たる雉真稔役を演じる松村北斗の持つ、じわじわと視聴者を引き込む演技の才が存分に発揮されたエピソードであった。

 見合いの話を持ち出され、早朝から家を抜け出した安子(上白石萌音)は大阪の稔のもとを訪ねる。夕方の帰社までの時間、二人は映画を観て食堂に行き、河原に行く。稔は安子のいつもと違う様子に気付き、推し測ろうとする。ひとり列車に乗り込み泣き出した安子が岡山に辿り着くと、目の前に急行電車で追いかけてきた稔が立っている。そして「御菓子司たちばな」に出向き、安子の父・金太(甲本雅裕)に交際の承諾を得ようとするものの丁重に断られてしまうのである。

 昨年1月にデビューを果たしたSixTONESのメンバーは、デビュー後それぞれがドラマや舞台など、演技者として活動の幅を広げている。その中でも特に出演作に恵まれているのが松村だ。Jr.時代からもコンスタントに出演作があったが、デビューのタイミングで放送されていた『10の秘密』(カンテレ・フジテレビ系)以降はひっきりなしにドラマや映画のメインキャストとしての出演が相次ぐ。現在公開されている劇場版『きのう何食べた?』では物語のキーパーソンとなる役柄で登場するのだから、その出世ぶりは目覚ましいものがある。

 とりわけ彼が近年演じてきた役柄を振り返ってみると、義足のハンデを背負いながら気丈に振る舞う青年を演じた『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)をはじめ、過去を背負った『10の秘密』、朗らかなキャラクターから一変した演技を見せた『レッドアイズ』(日本テレビ系)、はたまたツンデレキャラの『ライアー×ライアー』もしかり、二面的で少し影を帯びた、つかみどころのない役柄が様になってきた印象だ。とはいえ今回の稔という役柄は、それらと比較するとあまりに実直で聡明な、いい意味で昭和的なキャラクターに見える。案外こちらの方が、松村のイメージに合致するような気もしてならない。

 もっとも先に挙げた作品のような隙を見せない演技をするということは、いわゆる演技じみた演技ではない、極めて抑え目の表現に徹しているということでもある。そういった意味では、共演シーンが多いヒロインの安子を演じる上白石であったり、勇役の村上虹郎のように舞台経験が豊富で比較的アクトが大きい役者と対峙した時に、その個性が立つ。バランスといった面で、松村の演技が絶妙に機能していると見える。

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