『カムカムエヴリバディ』の“右脳的感覚”を与える演出術 ラジオ&和菓子描写に注目
“右脳的感覚”を与える細かな工夫や演出
――プロデューサーの堀之内さんから見て、安達さんの丁寧な演出についてどう感じているのか聞かせてください。
堀之内礼二郎(以下、堀之内):ラジオを一人の登場人物のように見せるという演出はとても効果的だと感じています。普通は出演者の姿や芝居を追いがちで、ラジオはただの物のように扱われてもおかしくない。でも、ここでラジオをしっかりみせていくことで、時には怖いラジオに見えたり、あたたかいラジオに見えたり、見え方に変化がつけられます。1週目では意図的に和菓子の映るカットや子供のいる情景を積み重ねていくことで、その人たちがそこで生きて感じている感触を一緒に味わえるようになっていて。食べ物が美味しそうだと、反射的によだれが出ますよね。そういう右脳的感覚を与える細かな工夫や演出がとても豊かで、個人的に安達の演出の中でもすごく好きなところです。
――まさに、和菓子がとても美味しそうに見えますが、和菓子のシーンで苦労した点や、役者さんの頑張りが見えた部分などはいかがでしょう。
安達:あんこに関しては、最後までキーアイテムになっていくので、立ち上げる時に指導の先生と一緒に、どういう見せ方をするのがいいのかを徹底的に相談しました。甲本(雅裕)さんや大和田(伸也)さんを含め、職人役の方には稽古もたくさんやっていただきました。あんこをおはぎに包むのは、一見シンプルなんですけれど、ものすごく難しいんです。これはさすがに職人技と言われるだけあると体感しましたが、3年修行するわけにもいかないので、作るリズムをしっかり表現していくことで落とし込んでいきました。皆さん本当に、すごく練習してくださったので、和菓子の先生のお墨付きもいただきながら、とてもリアリティーのある作業場のシーンが撮れたと思います。お店に並んでいるお菓子に関しては、とにかく美味しく見えることが1番大事だと思ったので、ものすごい時間をかけて徹底的にワンカットずつ撮りました。
――本当においしそうに映っていたので、多分和菓子が売れるのではないでしょうか。
安達:そう言っていただけて良かったです(笑)。和菓子が関係ないシーンでも、和菓子のアップを撮っておこうということは心がけて、あそこだけはまずく見えたら全てが終わってしまうので、非常に丁寧に撮影しました。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK