『大豆田とわ子と三人の元夫』メイキング集は必見の内容 成功の理由がわかる強いこだわり
何より驚かされたのが、作品の隅々に施された細部に対する強いこだわりである。例えば第1話には、とわ子が工事現場の陥没した穴に落ちてしまうシーンがある。本編では1分にも満たない短いシーンだが、メイキングを観ていると、このシーンを作るために工事現場のセットを作っていたことがわかる。
このシーンは描写こそコミカルだが、とわ子の心理状態を現している。だからこそ、この後八作が穴から引き上げて「やっほー」と言うシーンが重要になる。とはいえ、現場を作る手間暇を考えると、別の描写でも成立するため、「いらない」と判断してもおかしくないのだが、『まめ夫』のチームは手間暇を惜しまずこのシーンを撮っている。「神は細部に宿る」というが、こういう部分が作品を下支えしている。
他にも、綿来かごめ(市川実日子)が投稿用の漫画を描くアパートの適度な散らかり具合など、メイキングを観ていると、細かいところまで手の行き届いたセットや小道具に改めて感動する。同時にそれが悪目立ちしてないのが『まめ夫』の凄さである。
豪華な映像や派手なアクションを売りにする映像作品は少なくないが、映像作品は総合芸術だ。どこか一つが欠けてもダメだし、逆に一箇所だけが突出して悪目立ちしてもあまり美しくない。
脚本、俳優、演出、撮影、美術といった各部門がお互いをリスペクトしながら、より良い作品を作ろうと切磋琢磨している状況が理想的で、そういう作品こそが後に残る名作となる。すでにキャリアを確立している坂元裕二の脚本や松たか子たち俳優陣の演技と拮抗する映像をドラマスタッフが丁寧に作り上げたことこそが、本作が成功した最大の理由だったのだとメイキングを観て理解した。
何より、映像からうかがえる現場の雰囲気は終始にこやかで、実に楽しい現場だったことが伝わってくる。『まめ夫』の楽しさがどこから生まれたのかを知る上でも貴重なメイキングである。
■リリース情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
11月5日(金)Blu-ray&DVD-BOX発売
【Blu-ray】
価格:28,800円(税別)
仕様:2021年/日本/カラー/本編473分+チェインストーリー61分+特典映像179分/16:9 1080i High Definition/音声:リニアPCM2.0chステレオ(特典一部モノラル)/2層/日本語字幕(本編のみ)/本編全10話+チェインストーリー全10話/4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)
【DVD】
価格:23,400円(税別)
【仕様】2021年/日本/カラー/本編473分+チェインストーリー61分+特典映像179分/16:9LB/DISC1~5片面1層、DISC6・7片面2層/音声:ドルビーオーディオ2.0chステレオ(特典一部モノラル)/日本語字幕(本編のみ)/本編全10話+チェインストーリー全10話/7枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク2枚)
【特典映像】
・大豆田とわ子と三人の元夫×脚本・坂元裕二 座談会
・ロングメイキング集
・劇中音楽制作・坂東祐大×主題歌プロデュース・STUTS 対談
・撮影秘話続々!スタッフインタビュー
【音声特典】
・第1話オーディオコメンタリー(松たか子×岡田将生×角田晃広×松田龍平)
【封入特典】
坂元裕二書き下ろしエピソード付きブックレット
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、オダギリジョー、近藤芳正、岩松了
脚本:坂元裕二
音楽:坂東祐大
主題歌:STUTS & 松たか子 with 3exes「Presence」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
発売元:カンテレ
販売元:TCエンタテインメント
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