『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は遊び心満載? 作り手の自由度が高める映画の魅力
ところで『007』は言わずもがな、イギリスの映画的シンボルだ。その点においてはおそらく『ハリー・ポッター』と一、二を争うわけだが、両者に次ぐイギリス映画の代表キャラクターたるアードマン・アニメーションズの『ウォレスとグルミット』が今作でちらりと引用されていたのは見逃せない。映画冒頭、マドレーヌの幼少時代の回想シーンでマドレーヌの母が能面の男に襲撃される。その後、幼いマドレーヌを追って能面の男が2階へと上がると右側に置かれたテレビ画面に『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』のクライマックスのシーンが映しだされている。
これは単なるイギリス的なエッセンスに過ぎないかと思いきや、予想外の形でその後の物語とリンクする。それは科学者オブルチェフが誘拐される研究所のシーン。武装した一味が高層ビルの壁面を伝い、窓ガラスを破って建物内へと侵入する。これはまさに『ペンギンに気をつけろ!』の中盤、悪のペンギンであるマッグロウによって改造されたテクノパンツでウォレスが宝石泥棒をさせられるシーンでの外壁上りとリンクする。また悪役が他の者を利用して目的の物を盗み出すという点も一致し、サフィンのペルソナたる能面はマッグロウがゴム手袋を用いてニワトリに成り代わっていたものに近しく、そして悪役のあまりに呆気ない幕切れもまた通じており、こういった部分にも遊び心を感じてしまう。
■公開情報
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
全国公開中
監督:キャリー・フクナガ
製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン
脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、スコット・バーンズ、キャリー・フクナガ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ
出演:ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ラッシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック
主題歌:ビリー・アイリッシュ「No Time To Die」
配給:東宝東和
(c)2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.
公式Twitter:https://twitter.com/007
公式Facebook:www.facebook.com/JamesBond007