『古見さんは、コミュ症です。』増田貴久インタビュー

増田貴久が“大人”として新たな世代に伝えたいこと 「レベル1から始めてみればいい」

相手の意見をリスペクトすることを大事に

――あらためて、増田さんが思う只野くんの魅力を教えてください。

増田:個性の強いキャラたちも、みんなが只野くんには自分のことを自然と話せちゃう、話したくなっちゃうような人。決して聞き上手なわけじゃないと思うんですが、空気感や、その場にいるたたずまいとかで、みんなが只野くんにはすぐ馴染める……オーラみたいなものなんですかね。

――優しい空気感が、増田さんにピッタリだなと思いました。

増田:監督が、「こんな上手にスベれるのは天性のものだよ! 増田くんにしかできないよ!!」って。そこはたぶん、僕がもともと持ってるものなんでしょうね(笑)。でも、人が好きで、自分ひとりの時間を大切にするというよりは、みんなが空間にいる時にはみんなのことを見ている。“見なきゃ”ということではなくて、自然とみんながどこで何をしているのかを感じているような人だと思うし、僕もそういうところがあるかもしれないです。人見知りもしないですし。まぁ、只野くんよりはスベらないと思いますけど(笑)。

――(笑)。人見知りしないとのことですが、過去に自分が“コミュ症”だと感じたことはないですか?

増田:このお仕事をさせてもらっていると、「自分がこれを言っていいのかな」とか「これは今言わないほうがいいのかな」とか考えて、タイミングを逃しちゃうということはありますよね。空気を読んでいるつもりだけど、逆に読めていなくて無口になっちゃうような。デビューしてすぐの頃は、“自分らしく居られない”ということがすごくあったと思います。打ち合わせの時とかにも言葉を選びすぎて、「もっと言いたいことがいっぱいあるのに……」と思うようなことは多かったかもしれないですね。

――では、増田さんが今、コミュニケーションをとる時に気をつけていることを教えてください。

増田:僕は人の話を聞いても、自分の話で塗り替えちゃうタイプなんですよ。「俺なんてアマゾン川に飛び込んでさ~」って、もっとすごいエピソードを重ねるみたいな(笑)。でも、話を聞いている時に自分の話をしちゃうって、恥ずかしいじゃないですか。何も気にしないとそうなってしまうので、しっかり人の話を聞くことは意識しています。

――相手のターンが終わってから、自分の話をすると。

増田:そうそう。その上で、こっちの技術で塗り替えていく可能性はありますけど(笑)。僕は、エルビス・プレスリーの「人の意見は否定しちゃいけないよ。だって、あなたはその人の立場に立ったことがないんだから」という言葉を大事に生きているんです。自分はこう思うけど、その意見も否定しないよっていうスタンスでいたい。人の意見をちゃんとリスペクトすることを心がけています。

――今回の現場では、どのようにコミュニケーションを?

増田:僕は、現場の空気感が画面から出ると信じているので、早くから仲良くなったほうがいいなと思っていました。なので、顔合わせの時から、僕と溝端(淳平)くんはふたりでマシンガントークのようにめちゃめちゃ喋っていましたね(笑)。(池田)エライザちゃんとゆうたろうくんと吉川愛ちゃんは、たぶんその現場で二言くらいしか話していないです。そして溝端くんは、打ち解け始めたくらいで転校しました(笑)。

――たとえば、どんなお話をされるんですか?

増田:お互いを知るための会話みたいなものが多かったです。食事の話とか、趣味とか、音楽とか。あとは、難読漢字を黒板に書いて読めるかどうかをみんなでやっていました。結局、僕が一番読めなかったんですけどね(笑)。

――ご自身の過去を振り返って、とくに印象的だったコミュニケーションや会話はありますか?

増田:Jr.だった頃、一緒に先輩のバックについていた生田斗真くんが、僕が同じお茶を取ったのを見て「このお茶うまいよな」と言ってくれたのをすごく覚えています。斗真くんはたまたま話しかけてくれたんだと思うけど、自分から「ねぇねぇ先輩」っていけるタイプじゃなかったので、それがすごく嬉しくて、今でも心に残っているんです。嵐のコンサートの時に嵐の皆さんから言っていただいた言葉とか、ジャニーズの先輩たちがふとした時にくれたアドバイスが、今の自分を作ってくれているなと思うので、自分らのバックについてくれる後輩には、「自分ができることってなんだろうな、言ってあげられることってなんだろうな」とは思いますね。はじめましての人でも、ちゃんと見ている、ちゃんと知ろうとする、ということは大事にしています。

――ご自身の中でよく考えてから、お話しされているんですね。

増田:やっぱり後輩と話す時は、自分の言ったことが“力のある言葉”になることもあるので、変にアドバイスはできないですよね。でも、そもそも誰と喋る時でも気を使っていると思います。このドラマでいうと、吉川愛ちゃんに話しかける時は、おもしろい話題を振ろうと特に意識していました。年齢が離れているので、しっかりとしたジェネレーションギャップがあったんですよ(笑)。溝端くんと僕で交互に愛ちゃんに話を振って、どっちが早く仲良くなれるか、って。でも、ゆうたろうくんやエライザちゃんと話すときにも、どういう話をしたらいいんだろうなっていうのは自分の中で考えていました。

――視聴者からは古見さんに共感する声もあがっていますが、コミュニケーションが上手に取れない方にどんなメッセージを送りたいですか?

増田:コミュニケーションを取りたいっていう気持ちがあるなら、ゆっくりでも、ちっちゃなことでもいいと思います。「おはよう」だけ言って逃げるでもいいし、お手紙書くのでもいいと思うし。本当は、只野くんみたいに周りにわかってくれる人がいたらいいけど、もし、自分で変えてみようと思えるんだったら、挨拶するだけでも大きな一歩。できないことを悩みすぎないというか、自然な状態、“ちょうどいい”という意味の“適当”な状態でいたほうが、自分にも優しいと思うし、がんばりすぎないでほしいなと思います。

――自分にプレッシャーをかけすぎない?

増田:みんなそうだと思うんですけど、「自分はもっとできる」と思っちゃうんですよね。でも、それだと「うまくやらなきゃ」と思って、より緊張しちゃう。だから僕は、レベル1から始めてみればいいと思います。

――30代も後半に突入しましたが、今後どんな大人になっていきたいですか?

増田:年齢なのか、キャリアなのか、自分たちが任せてもらえるものや、期待していただけることが増えてきました。それに対して一つひとつ、期待してもらった以上のものを返さなきゃいけないし、「やっぱり増田に頼んでよかったな」「NEWSを使ってよかったな」と思ってもらえるように、ちゃんと結果を残していかなきゃなという思いは年々大きくなっています。あとは、自分たちを見てくれる若い子たちにも伝えられることがあるんじゃないかなと。ジャニーズの後輩もそうだし、今回のドラマは学生の子がたくさん観てくれると思うので、自分が伝えられることはしっかりと伝えていきたいな、と思う大人になってきています。

――ありがとうございました。最後に、『古見さんは、コミュ症です。』後半の見どころをお願いします。

増田:古見さんと只野くんの関係にも少し変化があったり、みんなが誰かのために、自分のために、いろんなことを悩んで考えていきます。「友達ってなんだろう」みたいなことを考えながら、自分が誰かのために動こうと思えるような、優しくなれる瞬間がたくさん描かれているドラマだと思います。ここから新たな生徒やクセの強いキャラも出てくるので、「自分もこういうところあるな」、「こんな人がいたらこうしてあげようかな」と、誰かの立場になって観てもらえたら嬉しいです。

※「コミュ症」という言葉は医療用語でも若者ことばでもなく、コミュニケーションが苦手な状態を指した原作オリジナルの略称です。

■放送情報
『古見さんは、コミュ症です。』
NHK総合にて、毎週月曜22:45〜23:15放送(全8回)
出演:増田貴久、池田エライザ、吉川愛、ゆうたろう、溝端淳平、筧美和子、大西礼芳、城田優ほか
原作:オダトモヒト
脚本:水橋文美江
音楽:瀬川英史
主題歌:aiko
制作統括:樋口俊一(NHK)、高城朝子(テレビマンユニオン)
プロデューサー:大沼宏行(テレビマンユニオン)
演出 :岡下慶仁(テレビマンユニオン)、石井永二(テレビマンユニオン)
総合演出:瑠東東一郎(メディアプルポ)
写真提供=NHK

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