福山あさき&畠山航輔、映画『カラミティ』で得た気づき 「自由に生きていいんだなって」

『カラミティ』声優インタビュー

福山「動物の死がリアルに描かれている」

ーー女性は女性らしくという時代にマーサが少年のように生きる姿を、お2人はどのように受け止めましたか?

畠山:マーサの力強さは、男性の僕からしても憧れるところで、生きていく上でこうあるものはこうあるべきだとか、既成概念に囚われてしまいがちだけど、そこから逸脱してやってみたら新しい発見があるということを、マーサを通じて教えてもらいました。

福山:今でも女性だから、男性だからっていうのはあると思うんです。特に『カラミティ』の舞台となった西部開拓時代はそれが、スカートを履かないだけで反感を買ってしまう。女性は馬に乗るべきじゃないし、投げ縄だってしない、ガチガチの差別で。その中で、マーサはそんなのお構いなしに自分を信じて進んでいくんですけど、その姿は見ていてかっこいいなと思いました。そういった差別は今でもありますし、それは男性にも、何歳なのにだとか、ほかにも「~だから」っていう偏見ってあると思うんです。『カラミティ』を観てると自由に生きていいんだなって思いますね。何事もやってみないと切り開けないということをマーサを見ていて教えられました。

ーーそういった大きなテーマがある一方で、『カラミティ』は冒険活劇として観られる作品でもあります。

畠山:いろんなキャラクターが登場するんですよね。マーサが冒険をするにつれて、いろんな人に出会い、別れもあるわけですけど、一つひとつの出会いにマーサが勇気付けられて、逆にマーサが人々に勇気を与える作品だなと思っていて。マーサが成長して巡り巡って、幌馬車隊に帰ってくるシーンも構成としては特徴的で。これまで数々の人々との出会いを通じて成長してきたマーサが人々との出会いを糧として、また新しい自分で帰ってきて、幌馬車隊を助けるシーンは人との出会いから得られるものがある。強くなれるんだなということを象徴していると思いました。

福山:冒険を通してマーサも変わっていくし、ほかの人々もマーサから影響を受けて変わっていくのが素敵だなと思っています。疫病神として煙たがられていたマーサが最終的には救世主として、リーダーとして必要とされていくのは、人と違う行動をしながらその思いを貫き通したマーサだからこそなんだろうなと思うと、勇気を出して一歩踏み出すことは大事なんだなと思いましたね。あとは、景色がすごく綺麗ですし、動物の死がリアルに描かれているんですよね。

畠山:リアルですね。びっくりしました。

福山:当たり前のように馬が流されて死んでいく。それがすごくリアルだなと思いましたし、景色も独特のタッチで描かれていて引き込まれます。一緒に冒険をしている気分になって観られるのも魅力だなと思います。

ーーアートのような美しい画も『カラミティ』の大きな魅力の一つですよね。

畠山:色使いがすごく素敵だなと思います。雲ひとつでもこんなに色があったんだとか。星空にしてもこれだけ鮮やかなんだっていうのが描かれている反面、星とか雲は綺麗に描くのに動物たちの死や生き様はリアルに描くんだなと思って。綺麗で色鮮やかな自然とこの現実的に描かれた死が対照的で面白いなと思いましたね。

福山:私は、マーサが初めて馬に乗れて星空の下を開放的に走っていくシーンが本当に好きで。レミ・シャイエ監督の画って芸術的な感じで、すごく引き込まれるんですよね。そこのシーンはセリフがないんですよ。一言も発さずにただ映像が流れるんですけど、それでも十分すぎるくらいに伝わったので、あそこはむしろないのがいいんだなと思って。

ーーほかにお2人が見てほしいポイントはありますか?

畠山:イーサンがどのように変わっていったのかも見てほしいですね。最初の方でマーサとぶつかり合いながらも、どこか素直になれないところがあって、幌馬車隊のお父さんからの期待にもなかなか答えることができない。そのイーサンの葛藤もあるんですけど、マーサが帰ってきた辺りから、イーサンがどのように変化していくかが見どころの一つで。特にイーサンのラストは、どれだけマーサに影響されてきたのかを象徴するシーンだと思うので、そこに注目していただければと思います。

福山:馬から突き落とされるシーンが旅に出る前と帰って来た後であるんですよね。全く似たようなシーンが。2人とも成長しているので、突き落とされた後のマーサとイーサンの表情も違いますし。畠山さんもあそこのシーンが好きって言ってましたよね?

畠山:はい。いいですよね。

福山:私もイーサン推しなんですけど、突き落とされて1回目は憎々しくマーサのことを見ているんですけど、2回目は突き落とされて笑うんですよね。あそこの笑い方が最高なんです。マーサのことが好きって気持ちもあるし、いろんな思いが込められた笑いで、私もラストが好きなんですよね。

ーー最後に、お2人は『カラミティ』をどのような方に観てほしいですか?

福山:周りの目を気にしてしまっていたり、生きづらさについて言い出せないような方にも響く作品だと思いますし、今のご時世で旅行に行けない方々にもこの作品を観て一緒に冒険をしている気分になっていただければと思います。万人受する作品ですので、小さい子から大人の方まで、ぜひ、多くの人に観てもらいたいなと思います。

畠山:僕はぜひ、ご家族で観てもらいたいなと思います。『カラミティ』って女性が女性として生きることを強制されてきたような社会という強いメッセージ性を持っていますけど、それと同時に冒険活劇であり、画としても楽しめる作品でもあるので。ある種、寓話のようにお子様にも安心して楽しんでいただける作品になっていると思うので、老若男女問わずいろいろな方に観ていただきたいと思います。

合わせて読みたい

芸術と娯楽に求めるすべてがここに 『カラミティ』が描く、自由に生きることの素晴らしさ

■公開情報
『CALAMITY カラミティ』
9月23日(木)より、新宿バルト9ほか全国順次公開
監督:レミ・シャイエ
出演(日本語吹替版):福山あさき、畠山航輔、松永あかね、木戸衣吹、杉田智和、上田燿司ほか
配給:リスキット
2020年/フランス・デンマーク/フランス語/日本語字幕/日本語吹替え/DCP/カラーCS/82分
(c)2020 Maybe Movies ,Norlum ,2 Minutes ,France 3 Cinéma
公式サイト:https://calamity.info
公式Twitter:@calamity_movie

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる