第78回ヴェネチア国際映画祭を総復習 話題になった人物、最も絶賛された作品は?

批評家たちの反応と今後の賞レースでの注目作品

 今回、最高賞である金獅子賞に輝いたのは、フランスのオードレイ・ディヴァン監督による『L’Evenement(原題)』だ。審査委員長のポン・ジュノが「満場一致ですぐに決まった」と語る同作は、人工妊娠中絶がまだ違法だった60年代のフランスを舞台に、望まぬ妊娠をしてしまった前途有望な女子学生の苦悩を描く。英Little White Lies誌のデヴィッド・ジェンキンズは、「今この瞬間に、本作よりも必要な映画は考えつかない」とし、先ごろ米テキサス州で人工中絶が違法になったばかりの現在にも通じるメッセージ性を評価している。Hollywood Reporter誌のデヴィッド・ルーニーは、「鋭い視点でフランスの社会的リアリズムを捕らえた本作は、個人の自由を尊重する人々にとって意味深いものになるだろう」と評した。アカデミー賞の前哨戦とも言えるヴェネチアで高い評価を獲得したことは、今後の賞レースでも優位に働く。

『Hand of God -神の手が触れた日-』Netflixにて12月15日(水)から配信予定

 そのほかの受賞作も注目作ばかりだ。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』や、銀獅子賞(審査員大賞)を受賞した『Hand of God ―神の手が触れた日―』はNetflix製作で日本でも配信予定なので、チェックしておくといいだろう。ただしアカデミー賞とNetflixの相性を考えると、少し厳しい戦いになるかもしれない。日本での公開が決定している作品では、やはり『DUNE/デューン 砂の惑星』と、『最後の決闘裁判』が注目だ。どちらも有名監督と豪華キャストによる大作映画なので、賞レースに絡んでくることは間違いないだろう。『スペンサー』は日本で2022年公開予定となっており、ダイアナ元皇太子妃を演じたスチュワートの評価が高く、すでに“オスカー有力候補”の呼び声もあがっている。ペドロ・アルモドバルとペネロペ・クルスというゴールデンコンビの『Madres Paralelas』や、マギー・ギレンホールの監督デビュー作で、脚本賞を受賞した『The Lost Daughter(原題)』も、日本公開を期待したい。

第78回ヴェネチア国際映画祭での『最後の決闘裁判』キャスト・スタッフ陣(c)第78回ヴェネチア国際映画祭

 世界最古の映画祭として、芸術性の高い作品が多いとされてきたヴェネチア国際映画祭だが、近年は最も多様で先鋭的な映画祭になっている。今回は、金獅子賞のオードレイ・ディヴァンをはじめ、女性監督の作品が主要3部門を制覇した。この結果が今後の賞レースに与えてくる影響や、どの作品が日本公開されるのか、これからさまざまな楽しみが待っている。

参照:
Bong Joon-ho says ‘Covid will pass and cinema will continue’ in rousing speech at Venice Film Festival
Jessica Chastain explains viral red carpet moment when Oscar Isaac's 'face ends up in my armpit'
Kristen Stewart's 'Spencer' receives 5-minute standing ovation at the Venice Film Festival
Kristen Stewart's 'Spencer' receives 3-minute standing ovation at Venice Film Festival
'Dune' Receives Eight-Minute Standing Ovation at Venice Film Festival Premiere
‘On The Job: The Missing 8’ gets 5-minute standing ovation at 78th Venice Film Festival
Penelope Cruz film gets nine-minute Venice standing ovation
Best of the Venice Film Festival: the 4 films that got standing ovations

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