『青天を衝け』草なぎ剛、慶喜の2年間を体現する“静”の芝居 噺家のような吉沢亮も

『青天を衝け』草なぎ剛、慶喜の2年間を体現

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)が2週間の放送休止を経て、9月12日に再開を迎えた。「静岡編」への突入となる第26回「篤太夫、再会する」では、栄一が6年ぶりに血洗島に帰郷。そこで市郎右衛門(小林薫)に告げるように、栄一は昭武(板垣李光人)との約束を果たすべく、慶喜(草なぎ剛)が謹慎する駿府へと向かう。

 この先、栄一にとっても縁深い土地となる駿府にある古びた寺・宝台院で、栄一は慶喜と2年ぶりの再会を果たす。冷え切った畳の部屋に栄一は、まだ準備が整っていないと思ったのか、「寺の者」に炭を足すよう促すが、その入ってきた者が慶喜。その処遇だけでなく、栄一が慶喜だと気づかないほどにすっかり覇気をなくしてしまっている。

 肩を落とし、俯きやつれた慶喜にかつての輝きはもうない。大政奉還、鳥羽、伏見の戦について言及する栄一に、慶喜は「またか」と言わんばかりに話を遮る。そう、慶喜が栄一に会いに来たのは、昭武のフランス渡航の様子を聞きにきたのだった。

「それでは、いま一度この渋沢が旅のご様子を余すことなく、お話しさせていただきます」

 ナポレオン三世の謁見式での勇姿、ヴィレットをはじめとした昭武を歓迎するフランスの人々、製鉄所の溶鉱炉や反射炉まで、栄一は熱く語り続ける。その姿はまるで噺家。どんどん熱を帯びていく栄一を「動」とすれば、それを受け止める慶喜は「静」である。だが、この慶喜の、草なぎ剛の静の演技がすごかった。

 さっきまであれだけ輝きを失っていた慶喜が、みるみるうちに生気を纏っていくのだ。それは2年間での昭武の成長はもちろんだが、またかつてのように栄一とひと時を共に過ごし心を通わせている喜びもきっとある。途中から部屋に西陽が射していることから、2人は数時間話し込んでいたのだろう。薄っすらと笑みを浮かべる慶喜のその表情が栄一への信頼と感謝を表していた。

 ただ、栄一にはどうしても慶喜に伝えたい思いがあった。「どんなにご無念だったことでございましょう」。それは家臣として将軍・慶喜の姿を一番近くで見ていたからこそ。ましてや慶喜が朝敵と見なされるという屈辱。慶喜は栄一の言葉に何も返答することなく、その場を去っていくのだった。

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