『おかえりモネ』に今田美桜がもたらす新たな風 莉子が東京編のメンターに?

『おかえりモネ』今田美桜が吹き込む新たな風

 莉子は本作で最も現実主義者なキャラクターだろう。震災の日に何もできなかった後悔から“誰かのために”という思いに縛られている百音に対して、莉子は「人の役に立ちたいとかって、結局自分のためなんじゃん?」と言う。「私は、自分が認められたいとか、有名になりたいとか、そういう欲求の方がシンプルだし嘘がない気がする」と。

 確かに莉子の言うことは間違ってはいない。だが、それでもこの直球な物言いは心苦しくなってしまう。百音はこれまで、“誰かのために”という一心で努力を重ねてきた。その姿からは、百音の思いが決して嘘ではないことが感じられたから。

 いや、百音だけでなく「登米・気仙沼編」に登場する人々は、“誰かのために”生きている人が多かった。祖父が営む家業のために、牡蠣の研究を続ける未知(蒔田彩珠)や、自暴自棄になった父の代わりに漁師を継いだ亮(永瀬廉)も。その一方、莉子は“自分のために”生きている。

 これまで、百音の苦しみは、彼女と同じような痛みを感じられる人としか乗り越えられないものだと思っていた。亮が、幼ななじみの百音に「俺やっぱ、モネしか言える相手いない」と頼ったように。

 百音と莉子は異なる環境で育ち、考え方も違う。けれど、莉子のように生きてきた人の方が、新しい風を吹き込み、傷を癒してくれることもあるのかもしれない。同じような苦しみを味わった人は、その苦しみに触れないようにして過ごすものだからだ。百音の同級生たちが、今でも震災の話を避けてしまうのも、そういうことだろう。

 となると、“あの日”から百音の胸の奥にこびりついている後悔の念を、莉子が壊してくれるのではないか……と思えてくる。不器用な菅波(坂口健太郎)をアシストしつつ、一緒に百音の呪縛を解いてあげてほしい。他人軸から自分軸へ思考を変えられるように。もっと軽やかに、シンプルに生きてもいいんだと思えるように。莉子は「何もなく普通にハッピーに生きてきた」と負い目を感じていたが、分からないからこそできることがあるのだ。

 まだ、“誰かのために”という重荷を下ろせずにいる百音だが、莉子と関わっていくことでまた新たな価値観を見出すことができるはず。百音のメンター役は、「登米」のサヤカ(夏木マリ)から、「東京」の朝岡(西島秀俊)にバトンタッチするのかと思ったが、案外、莉子がその役割を担っていくのかもしれない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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