『おかえりモネ』今田美桜の言葉から感じる気象予報の奥深さ 百音のパペットもかわいい!

『おかえりモネ』が描く気象予報の奥深さ

 気象予報は誰のためにあるのか。『おかえりモネ』(NHK総合)第48話にして、ある意味核心的な部分にすでにたどり着いてしまった百音(清原果耶)。しかも、上京してまだ数日しか経っていない。登米で流れている時間との違い、東京に来たんだという百音の実感がこういったスピーディーな展開で表現されているのは本作の演出の上手さである。

 朝の番組にもお手伝いとして駆り出された百音は、今は主に莉子(今田美桜)のサポートに回っている。まだボーっとしてしまったり、仕事中に携帯をマナーモードにしなかったり、何もわからないけどとりあえずそこにいる、という新人らしさがしっかり捉えられていた。そんなマイペースな彼女にとって野心家である莉子はあまり馬が合わないかも……最初、そんなふうに思えたものの、そんなことはなかった。莉子が百音に“お天気お姉さん”としての愚痴をこぼすのだ。

 視聴者の目線を引っ張る必要があるのがわかるが、「その情報いる?」と、納得の言っていない莉子。あれだけ息巻いていた、朝岡(西島秀俊)のようにスタジオで気象を伝えられる一大チャンスもふいになってしまったことから、どことなく自分の伝える情報とスタジオで伝える情報の間で優劣を持ってしまっているのかもしれない。

 しかし、これをまるで聞いていたかのように朝岡がその後、黄砂と強風の情報をめぐって気象予報士が「報道の人間」であることについて説く。百音の地元を襲う強風によって、誰かが傷ついてしまうかもしれない。それが事前にわかっているのなら、なおさら伝えるべきだという倫理観だけでは難しい。彼らは全国放送である以上、限られた時間の中で10万人に向けた話題(強風)より1億2千万人に向けた話題(黄砂)を優先しなければならないのだ。

 “気象予報は誰のためにあるのか”。今週のタイトルにもなっているその問いの答えは、もちろん人々のためだ。しかし、その中で“誰に”向けるべきかを毎日の放送で瞬時に判断していく必要がある。そういった天気予報の奥深さとともに、莉子のようなお天気お姉さんの立場の奥深さも朝岡は教えてくれた。

 莉子の言う、「それっている?」という情報とは「今日はあったかい」とか「寒い」、「さくらが綺麗」に始まるキャスターの“主観”だ。スタジオで解説するような客観的事実に加え、彼女の体感を伝えている。そこには公式が発表する暇もなく瞬間ごとに変わる天気を、“状況”を伝えるという意義があるのだ。先のように情報は常に取捨選択を求められる。その中で中継キャスターがいることで1億2千万人にも10万人にも、両方に向けた情報を発信することが可能になる。莉子は自分の役割に疑問を持っていたが、筆者である自分もお天気お姉さんの服装を見て「今日の気温はこのくらいのコーデか」と参考にするし。何℃って数字で言われてもピンとこないところに「汗が滲み出る」という表現が入ることで理解できることもあるし。体感って、結局のところ私たちが一番知りたい情報ではないだろうか。

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