『賢い医師生活』S2第8話は映画並の111分 「たった1本の電話で180度変わるのが人生」
「たった1本の電話で180度変わるのが人生」というセリフが表すように、たった一瞬の出来事がその後の運命を大きく変えることがある。医療現場の最前線である大病院では、患者に、患者の家族に、医師に、看護士に、病院のスタッフにも、それぞれの人生における劇的な瞬間が絶えず訪れる。『賢い医師生活』の第8話では、スライス・オブ・ライフのなかに調和する劇的変化の瞬間が描かれている。
第7話で心配性の母親について愚痴を言っていたソンファ(チョン・ミド)。念のために受けた診療を担当した先輩医師から母の病名を聞かされて動揺する。認知症を疑いながらも受診をためらっていたジョンウォン(ユ・ヨンソク)の母ロサは、深夜に転倒して病院に運ばれる。だが、ソンファの診療で病状がはっきりし、病室を訪れた想定外の訪問客に生きる喜びを感じる。妹イクスンの携帯待ち受け画面を偶然見てしまったイクジュン(チョ・ジョンソク)に、携帯アプリに疎いジュンワン(チョン・ギョンホ)は高速鉄道のチケット予約を頼む。グループメールを受診したソッキョン(キム・デミョン)は、バンドの練習を取りやめて病院に駆けつける。
キーボードのソッキョンが抜けたあとを担ったのは、ジョンウォンの母ロサ(キム・ヘスク)。S1の第9話で、初期うつ病と診断された幼なじみの理事長とともにバンド練習を見学した2人が、再度地下の練習室を訪れる。S1のメイキングでもピアノの腕を披露していたキム・ヘスクが満を持して登場し、劇中の「青春を捧げたものをもう一度」につなげていく演出はさすが。「Is It Still Beautiful(相変わらず美しいまま)」は、シンガーソングライターで音楽番組のMCなども務めるユ・ヒヨルのプロジェクトTOYによる1999年の楽曲。OST版は、男性アイドルグループのSEVENTEENのボーカル3人が歌っている。
S2も第8話まで進み、S1よりも患者や家族の描写が深く、数エピソードに渡る。第3話でイクジュンが学生時代の同期の依頼で引き受けた肝移植患者が、今度は心臓疾患を抱えてジュンワンの患者になり、同じ病室になった患者同士の交流も描かれる。病院とその周辺のスライス・オブ・ライフを描いた短編小説集『フィフティ・ピープル』(チョン・セラン著、斎藤真理子訳、亜紀書房刊)は、『賢い医師生活』のユルジェ病院のような大病院が舞台。医師よりも周りの人々、患者の家族や輸送ヘリコプターの操縦士、新薬の臨終試験責任者、患者を検査室まで移送する係など、医療現場を媒介に50人あまりの人生の一部分を切り取る。患者と家族に、病院で働くひとりひとりにそれぞれの人生があり、ドラマのオープニングで病院ロビーを人々が行き交うように人生が交差する。ドラマの副読本として『フィフティ・ピープル』を読むと、『賢い医師生活』で描かれる医師たちがいる層から放射線状に世界が広がり、さらには自分の元にもたどり着くように感じられる。