『東京リベンジャーズ』吉沢亮&林勇、マイキーの多面性を体現 実写&アニメを比較

 10代・20代を中心に旋風を巻き起こしている『東京リベンジャーズ』。アニメ、実写映画、舞台のメディアミックスに加えて、「ひよってる奴いる?」がバズワードになるなど各方面で話題を呼んでいる。人気の秘密はヤンキー×タイムリープという斬新なストーリー展開と、魅力的な登場人物たち。なかでも最大級の人気を誇るのがマイキーこと佐野万次郎である。

 マイキーは不良グループ「東京卍會(東卍)」の総長である。金髪を風になびかせ無邪気に笑うマイキーのビジュアルは、ヤンキー的ないかつさとは無縁で中性的ですらある。『東京リベンジャーズ』が広く支持された要因として、従来のイメージと異なるスタイリッシュな不良を描いたことが挙げられる。この点、東卍のトップを張るマイキーは『東京リベンジャーズ』を象徴する存在と言えるだろう。

 外見とは裏腹にマイキーは硬派なキャラクターだ。天賦の才に恵まれた蹴り技で「無敵」と称される一方で、スイーツ好きという素のギャップにやられる。総長としては「俺が後ろにいる限り、負けねえんだよ」と言い放つ絶対的なリーダーシップの持ち主。仲間思いだが厳しい一面もあり、冒頭の言葉は東卍よりも大きい愛美愛主に対抗するために、メンバーを鼓舞した時のものである。敵に向かって拳を振るうマイキーからは、単なる怒りや冷徹さで済まされないゾクっとするような狂気を感じることがある。屈託のない笑顔の裏側にあるのは底知れない虚無。そこには誰も知らない闇があって、強い絆で結ばれた“ドラケン”龍宮寺堅も気付かないほど。1人の人間の中に様々な顔があることはもちろんだが、マイキーの多面性は魅力と表裏一体の関係にあって、ストーリーを前に進める原動力になっている。

TVアニメ『東京リベンジャーズ』第2クール ノンクレジットED【泣き虫☔︎「トーキョーワンダー。」】

 劇場版でマイキーを演じているのは吉沢亮。すごみの効いた鋭い眼光から柔和な笑顔まで瞬時に切り替えることで、佐野万次郎というキャラクターを具現化している。「国宝級イケメン」の吉沢がマイキーを演じることに違和感はないが、マイキー特有の虚無を同時に表現しているのは特筆すべき点だ。もともと吉沢は、老成とも異なる一瞬の諦念あるいは達観したような雰囲気を持っており、それがはかなさとして表出したり、死の匂いを放ってはっとさせることがあった。本作でもそんな吉沢の役者としてのシグネチャーを感じることができる。

『東京リベンジャーズ』キャラクターPV第7弾

 無敵のマイキーは二重の意味で手の届かない場所にいる。腕力において屈することがなく、精神面でこの世ではない向こう側にいるからだ。こうしたコミュニケーションの途絶した風景にいるキャラクターを、吉沢は演じ続けてきた。映画『リバーズ・エッジ』の山田一郎や『AWAKE』の清田英一、『GIVER 復讐の贈与者』(テレビ東京系)の義波はそれぞれが欠落を抱えている。『なつぞら』(NHK総合)で当たり役となった山田天陽も絵によって世界とつながっていた。昨年公開された映画『一度死んでみた』や『青くて痛くて脆い』も、コメディと青春ドラマの違いはあるがコミュニケーションの回路を探るという共通の主題があった。これらの作品に流れる意思伝達の欠線を的確につかみ取り、役として生きているのが吉沢亮という俳優である。

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