『プロミス・シンデレラ』二階堂ふみだからこそ成立? 貫禄と無邪気さ同居した絶妙な芝居
ヒロインは一夜にして全てを失う。平穏な日常生活を送るのには不足のない相手だと思っていた夫、家を出た時に手にした所持金30万円、さらにはパートの仕事。もちろん住む家もない。
『プロミス・シンデレラ』(TBS系)の主人公・桂木早梅(二階堂ふみ)はかくして“アラサー・バツイチ・無一文”となったのだ。
でもどうしてだろう。彼女には悲壮感は漂わない。夫の不倫の痕跡を見つけても見て見ぬ振りできず問い正し、生意気で性悪な金持ちイケメン高校生・片岡壱成(眞栄田郷敦)らが同級生をパシリのように使うのを見過ごせない。そして壱成らに野宿している段ボールハウスを襲撃されてもへこたれずむしろ倍返しにして撃退する。タレコミがあってパートをクビになるほどのかつての素行の悪さも気になるところだ。
お金にモノを言わせて周囲を意のままに操ってきた壱成からすれば、野宿の身ながら全くお金に平伏さず、常に自尊心を持ち続けている早梅に興味津々だ。ビンタされてもどこか嬉しそうでさえある。彼からすれば早梅はこれまで出会ったこともない自分に真正面から啖呵を切ってくる初めての人で“特別天然記念物”のような存在なのだろう。
人としてどうかと思う部分も多々あれど、壱成も時に本質を突いた言葉を放つ。「人間、裏切るときは一瞬だ」なんてことをサラリと言ってのける高校生、恐るべしである。一体、彼もまたこれまでどんな歩みをしてきたのか気になる限りだ。
売り言葉に買い言葉で、壱成にけしかけられる形で彼の悪趣味な“リアル人生ゲーム”に参加させられる羽目になる早梅。「セレブパーティーで主役に恥をかかせたら20万円」というまた意地悪なお題に取り組まされる。そして壱成の予感はやはり的中するのだ。全く損得考えず、媚び諂うでもなく常に本気勝負の早梅だけが、彼にとってこの退屈で代わり映えのしない、何でも思い通りになってつまらない、だけれども本当に欲しいものは手に入りっこない“自由すぎて不自由”な生活を変えてくれる可能性を秘めているのだろう。頼んでもいないのに生まれた時から“家柄”や“財力”などあれこれ与えられてしまった、くだらなくって時に空虚な自分に比べて、何にも持っていないはずなのにたくましくって気丈でどうやっても奪えない何か“大切なもの”を自身の中に持っている早梅。どこまでも誰に対しても対等な早梅と一緒にいると壱成は落ち着くのだろう。壱成から早梅への“興味”が恋愛関係に発展するのはもう時間の問題に違いない。