『Mine』は新しい時代の女性たちを描く 韓国ドラマ定番の財閥ドロドロサスペンス

 Netflixで配信中の韓国ドラマ『Mine』を、ノンストップで完走した。パッと見は、韓国ドラマの定番とも言える財閥ドロドロサスペンス。しかし見進めるほど、その奥にある新しい時代の女性たちを描こうという強い意志を感じることができる作品だ。

 血縁、男性、偏見……自分自身を脅かすあらゆるものに打ち勝つために、女性たちは共闘する。かつての作品であれば、「女性の敵は女性」として描かれたであろう関係性が、「シスターフッド」的に描かれる。シンプルに「友情」とは言い難い、ひとことでは説明のできない関係性。その複雑さこそ、2021年らしさとも言えそうだ。

 世の中は、実に複雑になった。いや、もしかしたらもともと複雑だったものを、単純に見せかけられていただけなのかもしれない。不都合な真実から目をそむけ、偽りの平和を得るために。だが、近年になり多くの人が目覚め始めたのだ。自分自身と守りたいものが、偽りの平和に握りつぶされてたまるか、と。

60日後、殺されるのは誰か!?

 物語の中心にいるのは、チョン・ソヒョン(キム・ソヒョン)とソ・ヒス(イ・ボヨン)の義理姉妹。ソヒョンは自身も財閥出身、気高く知的で冷静な性格の持ち主。ヒスは、元女優で愛嬌と自分の意見をまっすぐに発する強さを兼ね備える。

 タイプの異なる2人だが、ヒョウォングループへと嫁ぎ、血の繋がらない息子を育てるという共通点を持ち、お互いを支えるように日々を過ごしていた。そこに、新たな女性たちが現れることで、穏やかに見えた日常が音を立てて崩れ始める。

 ヒスの息子・ハジュン(チョン・ヒョンジュン)の家庭教師として雇われたカン・ジャギョン(オク・ジャヨン)。そしてソヒョンの住む豪邸のメイドとなったキム・ユヨン(チョン・イソ)。ヒスとハジュンの親子の仲を裂くほどにハジュンに固執するジャギョンの謎めいた行動に、ソヒョンの息子・スヒョク(VIXX エン)とユヨンとの予想外な出会いに、2人はかき乱される。

 加えて、ヒョウォングループの一族も一筋縄ではいかない事情を抱えている。ソヒョンの夫・ジノ(パク・ヒョックォン)はバツイチで今も浮気三昧。仕事よりも宝くじのスクラッチに夢中という情けないところがある。また、ヒスの夫・ジヨン(イ・ヒョンウク)は人望があり、仕事もできるが、父・ハン会長(チョン・ドンファン)の婚外子。ハン会長の後継者問題も相まって、家族の中には不穏な空気が流れる。

 そんな悩める日々が、ある殺人事件へと向かっていることを知っているのは視聴者だけ。事件は60日後。豪邸の一角が血の海になることが第1話で告げられるのだ。しかし誰が殺したのか、そして誰が殺されたのかもまだわからない。

 広大な土地に立つ豪邸を舞台にした。ある種の密室殺人。2人が、そしてヒョウォングループの面々が事件に深く関わっていることは確かだ。その凄惨な事件が起こるまでの60日間を遡る形で物語が進んでいくのだから、続きが気になって再生ボタンを止められない。

※次ページよりネタバレあり

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