“あした”に向かって手を伸ばす物語『NOMAD メガロボクス2』 第1期からの変化を考察

『NOMAD メガロボクス2』を振り返る

 漫画『あしたのジョー』を原案としたTVアニメ『メガロボクス』。その第2期となる『NOMAD メガロボクス2』が、6月27日の放送で最終回を迎えた。今回は第1期からのストーリー内容にもしっかり触れつつ、本作の物語を振り返る。

 第1期では、ジョーと南部贋作、サチオらチーム番外地メンバーの、「あした」を掴むための一世一代の大勝負が描かれる。一度でも負ければ、命をもって償わなければならない中での激闘の連続。サブタイトルには第1話から第13話まで、「DIE」「DEATH」「DEADLINE」といった死を想起させるワードが必ず入る。死と隣り合わせでも、むしろジョーは回を重ねるごとに「死への恐れすらも飼い慣らして、なんなら一緒に踊ってやれ」と言わんばかりに、リング上で生き生きと戦う。何度打ちのめされても立ち上がる、『あしたのジョー』の主人公・矢吹丈から受け継がれたタフネス、そしてここぞという時のパンチ力、一発逆転のカウンターで魅せ、毎試合手に汗握るドラマが生まれた。

 第1期最終話での、第1回メガロニア決勝戦。ジョーと勇利がまさに“燃えかすも残らず真っ白に燃え尽きる”ほどの死闘を繰り広げた。エンドロールでは、ジョーがメガロニアの初代チャンピオンになって1年後、チーム番外地メンバーが、小さいながらもジムを開いたパーティで盛り上がる。決勝で戦ったジョーと勇利も、友好な関係が続いている様子だ。そんな大団円で第1期が幕を閉じただけに、続編となる『NOMAD』の製作発表がされた際には、多くの驚きの声が上がった。監督を務める森山洋も、勇利役・安元洋貴がパーソナリティを務めるラジオ番組『安元洋貴の笑われるセールスマン(仮)』の6月12日放送回にゲスト出演した際、第1期は続きを作る終わらせ方をしなかったと振り返っている。

 前作のラストから7年後の物語を描く『NOMAD』。物語が始まると、髪やヒゲは伸び放題で、顔や体の傷跡も増え、再び地下のメガロボクスのリングに立つジョーの姿が映し出される。その上、薬漬けでリングから降りると絶えず酒を呷り続け、痛々しく荒みきったジョー。あのラストから7年の間に何が起こったのかが、徐々に明らかになっていく。

唯一無二のザラついた空気感

 『メガロボクス』シリーズで特筆すべき点の一つは、全編を通して流れるザラついた空気感だ。森山監督は本作の第1期が初監督作だが、それまでTVアニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』や、『LUPIN THE IIIRD』シリーズ、『甲鉄城のカバネリ』シリーズといった、ルックも内容もハードな色合いの濃い作品で、コンセプトアートやプロップデザインなどを務めてきた。その圧倒的ビジュアルセンスと世界観を構築する力で、本作でも粗めの絵のタッチが、拳一つに魂をのせる登場人物たちのドラマと完璧にマッチしている。『NOMAD』序盤では、リングネームを「ノマド」に変え、各地の地下のリングを点々としているジョー。彼がそこで出会うチーフら移民たちの冷遇されている現状も相まって、設定は近未来の架空の土地ながらも、北米を舞台にした洋画を思わせるハードなストーリーが展開され、そのザラついた空気感を醸成する。

mabanua – MEGALOBOX (The theme of MEGALOBOX) [Official Audio]

 ルックの面だけでなく、サウンドもその空気感を形作る。本作の音楽は、世界から熱視線を集めるアーティスト・mabanuaが第1期から担当。前作『メガロボクス』では、しばしば劇中で謎の少年が歌唱するラップ曲なども織り交ぜられており、LEO今井によるOP「Bite」、NakamuraEmiによるED「かかってこいよ」も相まって、ジョーの未来を掴んでやろうという反骨精神と絶妙にリンクしていた。

 一方、『NOMAD』ではOP「The theme of the NOMAD」と、ED「El Canto del Colibri」までもをmabanuaが担当。OPがインストゥルメンタル、EDはスペイン語歌唱の楽曲という、TVアニメの主題歌として非常に挑戦的な組み合わせとなっていた。その哀愁あふれるサウンドが、南部も帰る家も失い、「過去」も「未来」も捨て、ただ「今」を生きるだけのジョーの物語を引き立てる。

 第1話の劇中でもチーフが弾き語りの「El Canto del Colibri」を披露。その後、ラストでジョーが野良犬の死体を埋めるシーンが、「野良犬」と呼ばれていた地下ボクサー時代に逆戻りしてしまっていた自身との訣別を示唆する。EDとして改めて「El Canto del Colibri」が日本語訳付きで流れ、ジョーのこれまでをなぞるかのような歌詞の内容が分かる構成だ。その後の第2話で初めて流れるOPでは、「NOMAD」と描かれた墓標に花を添えるジョーの後ろ姿からスタート。これまでのハイライトの後、グレーの色調で、過去に苛まれる放浪のジョーの灰色の日々を描く。チーフとの戦いなど、彼の記憶の中でも時折鮮烈なイメージのシーンが現れ始め、最後には第1期の情景が、次第に色付くように表現。ジョーにとって、チーム番外地の家族と過ごした日々が光輝いていて、それに対して現在がどんなに荒み、そして訣別したいものなのか伝わる映像になっている。



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