“リアル脱出ゲーム”を疑似体験 サイコスリラー『RUN/ラン』から学ぶ生き抜くための知識
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、『おかえりモネ』菅波先生(坂口健太郎)に惹かれてやまない、知りたがりマン・石井が『RUN/ラン』をプッシュします。
『RUN/ラン』
5月より放送がスタートしたNHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』。今週放送の第5週では主人公・百音(清原果耶)が気象予報士への道を踏み出すべく、天気についての勉強を始める姿が描かれました。百音の勉強をアシストするのが、医師・菅波(坂口健太郎)。「なぜ? どうして?」と初歩中の初歩となる百音の質問にもわかりやすい解説を加え、自分で考えるように導いていくれる。「こんな先生がいたらもっと勉強もできたのに」と思った視聴者は多かったと思います。菅波は百音に言います。
「知識は武器です。持ってるだけでは何の意味もないし使い方も難しい。ですが、持っているに越したことはありません」
そう、知識は持っているに越したことはないのです。週末オススメ映画のコーナーでありながら、朝ドラ話の導入になりましたが、この菅波先生の言葉が染み渡るのが映画『RUN/ラン』です。
本作の主な登場人物はわずか2名。母・ダイアンとその娘・クロエです。生まれつきの病気により車椅子生活を余儀なくされていたクロエは、在宅で学び続けた知識と新たな可能性を信じて大学への進学を望みます。献身的に、というよりも過保護ともいえる過剰さでクロエを支えるダイアン。この過剰さの理由にはとんでもない秘密があるのでした……。
本作の監督を務めるのは、PCの画面だけで映画1本を作り出し、しかもハラハラドキドキなサスペンスを展開した映画『search/サーチ』のアニーシュ・チャガンティ。超難題を傑作映画にした前作に続き、本作でも切れ味鋭い編集で、観客の心理をえぐってきます。
『search』は物語が画面上で展開することもあり、役者たちの“顔芝居”が重要な要素となっていました。本作はそういった縛りはないものの、声に表せない感情を見事に表情だけで訴えてくるクロエを演じるキーラ・アレン、虚無の表情が恐ろしすぎるダイアンを演じるサラ・ポールソン、2人の“顔芝居”が素晴らしいです。
クロエは母から与えられる薬に疑問を持ち、どんな効用なのか調べようとします。しかし、スマホは与えられず、PCもダイアンの前でしか基本的には使用できないクロエは“ググる”ことができません。こっそり夜中にPCを使おうとしても、なぜか(?)ネット回線が繋がらない。どうにかして薬の真実を突き詰めたいクロエは、適当に打った番号でつながった電話でその相手にググることを頼みます。結果、その薬は治療のためではまったくなく……というところから物語は怒涛のように展開していきます。