『リコカツ』永山瑛太×北川景子が掴んだ“2人らしい未来” 夫婦円満に必要だったものとは
あれだけ“別居婚”を嫌がっていた紘一がそれを受け入れたのは、互いの譲歩が見られたからだろう。第5話で同じような壁にぶつかったときには、そもそも紘一は自分が仕事を辞めるなんて選択肢は持ち合わせておらず、咲に「家庭に入ってほしい」と話していたし、そうなれば咲も売り言葉に買い言葉で「あなたが家庭に入ってもらう訳にはいかないの?」と反射的に返しているような節もあった。
それが、今回はまずそんな紘一が自分の大切な仕事を手放して咲の夢を応援しようとした。そんなふうに自分を想ってくれる気持ちを感じられれば、自分もそれに応えたいと思うのが人というものだろう。だからこそ咲も「私は何があっても紘一さんの側を離れない。私はパリには行かない。自分の力でファッションの仕事に戻ってみせる!」と一旦パリ行きを断念する。
この譲り合いの結果、紘一はこれまで頑なに避けてきた“別居婚”に近い“ワールドワイドな3年間の遠距離恋愛”を自ら提案できたのだろう。
「パリで研修もしたいし、紘一さんの側にもいたい。そのためにベストを尽くしたい」と正面から伝えた咲は清々しい表情を見せた。それに紘一も「これが二人の幸せの形だ」と重ねる。
そして急に壁に飾られた他所の家の家訓ではなく、“2人のルール”を作る。2人の、2人による、2人のためのルールだ。交際0日婚の彼らには、結婚前にこんな時間もなかったのだろう。婚姻届を出すことよりも、こうやって2人の価値観をすり合わせ、2人なりの心地よさを探っていく時間こそが、2人を夫婦に、家族にしていくのかもしれない。
咲と紘一それぞれの両親が口々に言っていた通り、「人生100年時代」にこそ“夫婦”や“家族”という記号としての関係性にだけ胡座をかくのではなく、その時々で2人にとっての幸せの形を確認し合い、それこそ2人で何度でも話し合うことが必要になってくるのではないだろうか。何も「過去」にこだわりすぎる必要はない。でもだからこそ、互いに歩み寄り、時に変化し合う努力も忘れてはいけないのだろう。「そのままの君が好き」と言い続けられるようにするには、また言ってもらい続けるためには、実は互いが同じような歩幅で柔軟に成長し、変化することが大切になる。
婚姻届を出したから、同じ屋根の下一緒に過ごしたからと言って“夫婦”にも“家族”にも自動的になれる訳ではなく、“夫婦だから分かり合える”なんてことも毛頭なく、2人で一緒に時間を積み重ねていくしかないのだと咲と紘一が教えてくれた。
3年越しの再会が描かれたが、咲にとっての帰れる場所が紘一で良かった。咲に「お帰り」と言えるのが紘一で本当に良かった。
■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter
■放送情報
金曜ドラマ『リコカツ』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:北川景子、永山瑛太、高橋光臣、白洲迅、大野いと、田辺桃子、中田クルミ、平岩紙、宮崎美子、酒向芳、三石琴乃、佐野史郎
脚本:泉澤陽子
演出:坪井敏雄ほか
プロデュース:植田博樹、吉藤芽衣
主題歌:米津玄師「Pale Blue」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作著作:TBS
(c)TBS