『おかえりモネ』坂口健太郎からの美しい“知識”のプレゼント 学び考え続けることの大切さ
さて、百音は上手くいかない現状に落ち込んでいた。新しいことに挑戦しようとしたとき、つまづくのは当たり前である。しかし、そんな時でもまた立ち上がって歩んでいく力になるものが「知識」だ。
菅波は「物事がうまくいかなくて落ち込んでいる時、僕は何かしら新しい知識を身につけるようにしています」と言う。知識があれば、その悩みや問題を解決する事ができる。知識があれば、無知からくる恐怖と戦い自衛することもできる。すなわち、知識は武器なのだ。
そして菅波は百音に「知識」――中学の理科の教科書をプレゼントする。これまで百音に厳しく接しつつも気をかけてきた菅波だが、その贈り物はどんな物よりも美しい。彼が今後、百音と恋愛関係に発展するかしないかはさておき、それでもこれほどまでにロマンチックなプレゼントはないだろう。しかも、それを百音が授業中に雑談で話していた自分の生まれた夜……台風で満月だったという情報を基に後日、誕生日を調べていたというのだから、惚れてしまう。
改めて私たちはある程度のことを義務教育で学んできたこと、そしてわからないものをわかろうとするとき、難しい言葉ばかりの大人向きの教育書より、よっぽど中学の教科書の方が役立つことを思い知らされた。持ち前の知識と本が提供する知識に乖離があるのであれば、一度基本に立ち返ること。大人になるとつい忘れてしまう大切なことに気づかせてくれた菅波は百音にとっても、私たちにとっても理想的なメンターである。
数々の金言が胸に響いた第24話。百音はその教科書に書かれていた熱の伝わり方などを、今度こそ日常に落とし込んで理解していく。その様子は本当に楽しそうで、魔法使いの弟子がようやく自分なりの小さな魔法を生み出す手かがりを見つけたよう。そして今の状況を打破するヒントを“洗濯”から得たであろう百音は、思い切って駆け出した。
※高田彪我の「高」はハシゴダカが正式表記。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。湖畔でキャンプがしたい。Instagram/Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK