『デニス・ホー』が描く“人間”として生きる大切さを 監督が昨今の香港事情について語る
続いて、阿古氏は香港の教育事情について言及する。香港の学校では、リベラルスタディーズという科目があり、様々な観点から学生が議論し、一人ひとりが独立した考えを持つことが大事だと教えているが、近年は中国の影響で愛国教育を押し付けられるようになってきているという。人間が自らの考えを持てず、思想を押し付けられるのは苦痛なことであり、人間らしい生き方を制約するもの、そんな中で、人間として生きることの大切さをこの映画は伝えているのではと阿古氏は考えているようだ。
2人は、習近平の近年の発言「愛される中国」を目指すべきという発言について議論。阿古氏は、個人的な知り合いの人権派弁護士が、日本に留学中の娘が危篤状態になっているにもかかわらず、中国政府が出国を認めていないという事例があると紹介。大事な娘の一時代に移動を制限するのはありえないことであり、もし愛される中国を目指すというのであれば、そういうところから改善して、父親が娘に会えるようにしてほしいと切望した。
最期に、阿古氏は、この映画は我々自身が人としてどうありたいのかを問うている、日本にも近年の香港人から多くを学んだという人も多いので、引き続き発信を続けていきたいと豊富を語り、ウィリアムズ監督は、香港情勢に少しでも関心を寄せてほしい、この映画を友人や知人にもすすめてほしいと締めくくり、トークショーは幕を閉じた。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
■公開情報
『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』
シアター・イメージフォーラムにて順次公開中
監督・脚本・プロデューサー:スー・ウィリアムズ
制作総指揮:ヘレン・シウ
共同制作:ジュディス・ヴェッキオーネ
編集:エマ・モリス
撮影:ジェリー・リシウス
配給:太秦
協力:TOKYO FILMeX、市山尚三
字幕:西村美須寿
字幕監修:Miss D
2020/アメリカ/ドキュメンタリー/DCP/83 分
(c)Aquarian Works, LLC
公式サイト:deniseho-movie2021.com
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