『グンダーマン』監督がドイツからメッセージ 「過去の歴史と向き合えるときが来ている」

『グンダーマン』監督からメッセージ

 映画『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』の公開記念オンライントークイベントが5月15日に東京・ユーロスペースで行われ、アンドレアス・ドレーゼン監督からメッセージが寄せられた。

 本作は、“東ドイツのボブ・ディラン”と呼ばれ、秘密警察(シュタージ)に協力していた実在のシンガー・ソングライター、ゲアハルト・グンダ―マンの生涯を描いた人間ドラマ。東ドイツ出身のドレーゼン監督が、脚本のライラ・シュティーラーとともに10年の歳月をかけて作り上げた。

 主人公グンダ―マンを演じるのは、東ベルリン生まれのアレクサンダー・シェーア。劇中で演奏される全15曲を自らカバーして歌っている。グンダーマンの妻コニーをアンナ・ウンターベルガーが演じている。

 ドレーゼン監督はドイツの自宅からオンラインでユーロスペースのスクリーンに登場。場内の観客たちを観て、「映画館にお客さまがいることに、感動しています。本作を観てくださり本当にうれしいです」と喜びのコメント。新型コロナウイルスの感染拡大により、ドイツでは1年以上映画館が閉館となっていることもあり、“映画館で映画を観ることができる日常”があることに感慨深い様子。

 本作の製作にかかって月日は約12年。一番時間をかけたのは脚本作りだったそうで、「43歳で急逝したグンダ―マンの人生を2時間にまとめるのは大変な苦労でした。グンダーマンの妻であるコニーに何度も話を聞いて、彼が暮らしていた部屋にも何度も訪れました。コニーが惜しみない協力をしてくれたこと、グンダーマンが実際に働いていた炭鉱の方々の協力もあり、深く彼を知ることができました」と脚本作りの経緯を明かした。

 グンダーマンを演じたアレクサンダー・シェーアは劇中で全15曲を自ら歌唱。歌唱の吹き替えという選択肢は監督には最初からなかったそうで、「グンダーマンの実際の音源も素晴らしいですが、21世紀の観客には少しアレンジしたものの方がより伝わると考えていました。あとはとにかく“ライブ感”を大切にしたいと思っていたので、アレクサンダー自身の声で歌ってもらうことが何よりも大事だと思っていました」。

 グンダーマンは労働者たちのヒーローとしての顔と秘密警察(シュタージ)のスパイという相反する顔を持った人物。ドレーゼン監督は主演のシェーアを「本当に努力してくれた」と絶賛。「グンダーマンは、加害者でもあり、被害者でもある、複雑な人物です。多くの映画で『秘密警察(シュタージ)=悪』という構造で描かれていたのですが、シュタージの中にもさまざまな背景を持った人物がいたわけです。人生は誰でも間違いをおかすものです。誰もが間違いをおかすものだからこそ、グンダーマンの人生も自分とかけ離れたものとして観るのではなく、身近なものとしても感じられるのではないかと思います」。

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