坂元裕二が突きつける、他人が物語を作り出す傲慢さ 『まめ夫』は私たちの日常に入り込む

 第2話で「まだ過去じゃない、過去にできていない。ある意味離婚はまだ続いている」と語る慎森(岡田将生)。第3話で古木美怜(瀧内公美)との出会いをきっかけに、とわ子を撮った自身の「最高傑作」を更新しようと決心する鹿太郎。八作(松田龍平)の場合は、かごめへの片思いを終わらせることができない過程の中に、とわ子がいた。彼らは第1章において、それぞれ自分の想いに区切りをつけ、次の恋に進もうとするが、あっけなく全ての恋は始まる寸前で終わりを迎え、未だ彼らは元妻・とわ子が気になって仕方がないままである。

 このドラマが描こうとしているのは、「小説や映画じゃない人生」だ。シーズン1(八作)も2(鹿太郎)も3(慎森)も、明確な結末を見つけることができないまま、「別れたけど今でも一緒に生きている(第2話)」。私たちの人生もそういうものだ。簡単に終われない。簡単に割り切れない。「楽しいまま不安、不安なまま楽しい(第1話)」結末のない日々をずっと生きている。

 さて、最後の最後に登場した小鳥遊大史は一体どんな人物なのか。「人を傷つけるのって他人だから、慰めてもらうのも他人じゃないと」と第5話で慎森は言っていたが、第7話において仕事とプライベートにおいてその両方の「他人」の役割を担ってしまった、強烈にとんでもない男・小鳥遊を前に、とわ子は無意識に涙を「こぼした」。ドラマ『カルテット』(TBS系/坂元裕二脚本)における「人を好きになるって、勝手にこぼれるものでしょ」というすずめ(満島ひかり)の台詞を思い出さずにいられない。彼が加わることで、ラスト3話がどう動いていくのか。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。Twitter

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

関連記事