細田佳央太×関水渚が見せる好対照の活躍 『町田くんの世界』からの2年間の進化を追う

 石井裕也監督が2年前に手がけた『町田くんの世界』は、公開前の話題性とは裏腹に、お世辞にもヒットしたとは言い難い興行成績であった。それでも、純粋に作品の完成度の高さやおもしろさを含め、公開からある程度の年月を経てもいくつもの“語るべき”要素があるというのは、それだけ映画としての価値が高いという何よりの証拠ではないだろうか。

『町田くんの世界』(c)安藤ゆき/集英社 (c)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会

 公開当時すでにマンネリ気味であった少女漫画の実写映画化というジャンルに新たな風を吹かせるための挑戦の数々。たとえばこれは原作漫画の時点から極めてイレギュラーなポイントとしてあったものだが、少女漫画らしい、いかにもな恋愛青春描写に特化せずに周囲の人々を動かす不思議な才を持った男性キャラクターを主人公に据えたこと。共感性を重視し現実のなかに生じる“理想”というファンタジーを追求しがちなこのジャンルに、映画的で明確なファンタジー要素を与えたこと。

 そして何より、岩田剛典や高畑充希、前田敦子、仲野太賀(当時はまだ「太賀」だった)といった20代後半の実力あるキャストをサブのポジションに置いた上で、メインカップルを演技経験の乏しい2人の若手俳優に完全に委ねたこと。その2人のアンバランスな掛け合いがコミカルに、またどこか懐かしいカートゥーンを想起させるようなスラップスティック性に富んで描かれることによって、“キラキラ映画”はおろか従来の日本映画ではあまり見かけないタイプのユニークな世界を構築することに成功していたのである。

(c)安藤ゆき/集英社 (c)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会

 主人公の町田一役を演じた細田佳央太と、ヒロインの猪原奈々役を演じた関水渚。厳密に言えば2人とも、『町田くんの世界』に出る前から活動しており、まったくの新人というわけではなかった。細田は子役としての活動を経て、学園ドラマの生徒役や連ドラで主人公の少年期を演じるなど、もっともオーソドックスな子役活動を辿ってきた。一方で関水も、「ホリプロスカウトキャラバン」がきっかけで芸能界入りし、CMなどで活動。演技経験は乏しくとも、機会にさえ恵まれればいくらでも伸びる余地を持った2人というわけだ。例によって2人は、各映画賞の新人賞で存在感を示し、その後順調にキャリアを積みあげている。

『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(c)2020「コンフィデンスマンJP」製作委員会

 先にその素質を一気に開花させたのは関水の方だ。『町田くんの世界』公開直後の秋クールから、2クール連続で民放の連ドラに出演し、年が明けてからは『カイジ ファイナルゲーム』や『コンフィデンスマンJP プリンセス編』と、既存の人気シリーズの新キャラクターとして、強い個性を持った俳優たちのなかでまざまざと爪痕を残す。そして今年1月から放送されていた『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)では、SNSの誹謗中傷問題を取り扱う専門部署「ゆびたい」のメンバーの1人として、香取慎吾演じる万丞の相棒となる碓氷咲良役を好演。

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