アメリカの映画館が日常に戻りつつある兆候 #TheBigScreenIsBackの取り組み

 ハリウッドをはじめとするアメリカの映画館には今、“日常”が戻ってくるような兆候がある。先日改めて今夏に公開されるサマーブロックバスター映画の宣伝の意を兼ねて、ハリウッドの業界人がロサンゼルスのAMCセンチュリー・シティでイベントを開催した。

 この取り組み「#TheBigScreenIsBack」は、ハリウッドの幹部や全米劇場所有者協会、映画協会、映画館、スタジオなどの幅広い連合によって支持されているキャンペーン。テリー・カーティンや、アメリカの大手エージェンシーの一つCAA(クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー)のメーガン・クロフォード、IMAXのメーガン・コリガンらベテランのマーケティングエグゼクティブおよびベテランのディストビューションエグゼクティブのカイル・デイヴィスが主導している。4月末のアカデミー賞のプレショーでマシュー・マコノヒーが登場した以下の告知動画を皮切りに、人々に映画館に戻るように呼びかけをするものだ。

The Big Screen Is Back | Message from Matthew McConaughey

 この動画では、マコノヒーが地元テキサスのオースティンから「一時解雇や劇場閉鎖など、映画館で働く立場の人々にとっては未だかつてない最長の休暇を強いられた。しかし、彼らの献身のおかげでついに映画館が戻ってくる」と冒頭で話し、映画館に観客を取り戻すために、これまでたゆまぬ努力をしてきた幾人かの従業員がビデオ内で紹介されるというものだ。メッセージの間には劇場公開が延期されていた作品……『フリーガイ』や『ジャングル・クルーズ』、『DUNE/デューン 砂の惑星』、『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』、『ブラック・ウィドウ』、そしてこれからの映画館の失った興収を取り戻す期待のかけられた最新作……『ワイルド・スピード/ジェット・ブレイク』、『SING/シング2』、『モービウス』、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』、『クルエラ』などのフッテージが挿入されていて、映画館で映画を観ることを心待ちにしていた全てのファンの心を揺さぶるものとなっている。

 このムーブベントのさらなる動きとして、主に映画制作者やスタジオエグゼクティブが登場したセンチュリー・シティでのイベントでは、元カリフォルニア州知事でもあるアーノルド・シュワルツェネッガーがサプライズゲストとして登場。「We are back!(我々は戻ってきた!)と一緒に唱えましょう」と会場にいる人々に訴えた。

 本イベントのプレゼンテーションに登場した映画人は、基本的に「映画館の大きなスクリーンにとって変わるものはない」という意見を持つ人ばかりで、ストリーミングにおけるメリットを宣伝する者は誰一人いなかったという。一貫して、映画を鑑賞する第一の選択肢として、映画館を復活させることに焦点が当てられた。

 それこそディズニープラスで配信しているドラマが大ヒットを記録しながらも、ずっと『ブラック・ウィドウ』の公開を延期してきたマーベルのCEOケヴィン・ファイギも、メッセージ映像として本イベントに参加。「マーベルの映画は大きなスクリーンで観られるように作られています。私の意見としては、マーベル作品に限らずどの映画もそれが一番良い鑑賞方法だと思っています」と述べた。

 会場にはJ・J・エイブラムスも登壇し、「映画館に戻れることは本当に素晴らしいことだ。個人的に、間違いなく私の人生における最良の出来事はこの部屋(映画館)で起きた」と自身の映画人生を振り返りながら、人々に映画館で再び会おう、と言葉を残している。

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