『ダイの大冒険』大人になって再認識するポップの魅力 誰よりも高い“自意識”の強さ
『ダイの大冒険』の主人公は、もちろん勇者ダイだ。しかし、ダイの相棒で魔法使いのポップも、間違いなくもう一人の主人公である。ポップは『ダイの大冒険』を語るうえで欠かせないキャラクターであり、実際に読者人気も非常に高い。現在放送中のテレビアニメでは、ポップの名シーンのひとつ、バランへのメガンテ(自爆攻撃)が描かれた。すでに完結している漫画なので、どこまでネタバレしていいのか迷うけれど、できるかぎりボカしつつ、今回はこのメガンテから最終決戦までに描かれる“ポップの物語”の魅力を語っていきたい。
バランという作中屈指の強キャラを相手にして、しかもメガンテで一回死んだせいで、このエピソード以降のポップは一皮むけた活躍を見せる。自分より格上の相手にも積極的に挑み、過酷な修行に身を投じていく。戦闘能力も格段に向上し、遂にはアバンストラッシュにも勝るとも劣らない数々のカッコいい技を習得。ダイのパーティの中核を成すキャラへと成長する。しかし、それでもポップは最終決戦まで、どこか頼りない。このバランス感覚こそ『ダイの大冒険』の凄いところであり、ポップの魅力でもある。
『ダイの大冒険』は、キャラクターの心理描写が丁寧だ。週刊連載の、しかもジャンプ漫画ということで制約は多々あっただろう。しかし、短くても効果的に、キャラの心情を掘り下げている。ポップはその中でも特に丁寧な扱いを受けているキャラだ。単純な戦闘力はドンドン強くなっていくが、一方でメンタル面は最終決戦に至るまで未熟なまま。たとえば「ここはオレに任せとけ」的なことを言ったあとに、「あそこまで言っちゃあ もう逃げられねえぜ……」と後悔したりもする。自意識、ひいては「他人にどう見られるか?」を物凄く意識したキャラ造形がなされているのだ。ポップが「成長するキャラクター」の代名詞となったのは、ひとえにこの自意識の強さが描かれていたからだろう。純粋な少年のダイとも、闘志の塊みたいなヒュンケルとも異なる(強いていうなら、中間管理職として苦労するハドラーが近い)。
ポップは自意識が(他のキャラに比べて)強いからこそ、他のキャラとは全く異なる危機に直面する。それは仲間内での人間関係だ。強くなって、周囲から信頼を得て、自分に自信をつけた。勇者の仲間として確固たる居場所を見つけるのだ。けれど、誰よりも苦労して得た居場所だからこそ、それを失うことを誰よりも恐れる。いわば「成長した」こと自体が弱点となって襲ってくるのだ。その弱点は、決戦前からジワジワとポップを追い詰め、やがて非常に劇的な形で決着を見る。終盤は名シーンのオンパレードだが、ポップがこの弱点を克服するくだりは作中屈指の名シーンだと断言したい。普通に何回読んでも泣きそうになるんですよね。またメルルが凄くイイじゃないっすか。細かいところですが、あそこでロン・ベルクが誰よりも早く反応してるのも好きなんですよ。格上感があって。