菅田将暉「もうダメってこと?」が虚しく響く 『コントが始まる』余韻残るベストエピソード

 『コントが始まる』(日本テレビ系)、5月15日放送の第5話。持ち直しかけていたマクベスは、しかし再び、予定どおり6月の単独ライブで解散することを決めた。重い重い決断である。10年間の努力や苦悩を捨て去る、痛く虚しい惜別である。フィクションであるというのに、まるで実際に好きな芸人が解散してしまうことを知ったかのような息の詰まる悲壮感、それでいてベストエピソードとしか言い表しようのない余韻が残る。

 解散を前にして瞬太(神木隆之介)は5年前、春斗(菅田将暉)と潤平(仲野太賀)に合流した当時のことを思い出していた。彼にとってそれは、どれもが楽しい過去。3人で共同生活を始めた日の修学旅行みたいな気分、子どもみたいに必死に取り組むじゃんけん、交通費と宿代を浮かせるため遠征ではよく車中泊をしたこと、寝る前に語り合った夢のこと。

「夢が叶わなくても幸せだった。夢を語り合える時間があれば、それだけで幸せだった」

 延長するか出ていくか。家族も恋人も、彼らが芸人を続けることに真っ向から反対するものはいなかったが、恩師である真壁先生は「解散したほうがいいと思うぞ」ときっぱり答えた。結局は自分たちで決めなければいけない。解散を決めることが最後の大仕事かのように、3人それぞれに降りかかってくる現実の容赦なさ。なかでも、潤平と奈津美(芳根京子)の電話でのやりとりがとても辛い。恋人の仕事のピンチを救ってあげることができない、自らの境遇を呪う。

 「なんでこんな虚しい気持ちになってまで続けんだろ」。そう吐露するしかない状況に追い込まれた潤平に、寄り添ってあげられるだけの余裕はもはや春斗にはない。そのどん詰まり感、どうしようもなさが、一番の解散理由だったのかもしれない。春斗は叫び散らし、一筋の涙を流す。潤平はもう何も言い返さない。瞬太は、5年前に見た解散間近の険悪なコンビを思い出している。避けようとした未来についにぶつかってしまった。「じゃあもうダメってこと?」。春斗の声は誰にも拾えず、宙に浮いた言葉と一緒にマクベスは居場所を失くす。

 これまでに費やされた4つのエピソード、その決して多くない時間の濃密さをここにきて改めて実感させられる。応援してくれた春斗の兄のこと、里穂子(有村架純)を含め、もしかしたらマクベスの存在がいくつかの生きがいを与えたかもしれないこと。そしてマクベスそのものが、高校時代からなんども彼ら自身を救ってきたであろうこと。だからこそ、「解散」が決定される瞬間に一言で表せない重みと悲しみがある。

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