『おちょやん』最終週がスタート! 千代が葛藤する一平へのわだかまり

『おちょやん』最終週がスタート!

 昭和27年(1952)2月、竹井千代(杉咲花)と春子(毎田暖乃)が暮らす家に鶴亀株式会社の熊田(西川忠志)がやってきた。NHK連続テレビ小説『おちょやん』が最終週初日を迎え、天海一平(成田凌)の名と「道頓堀の舞台に上がってほしい」という熊田の願いを聞き、千代が浮かべた複雑な表情が印象的な回となった。


「一平もちゃんとええお父ちゃんやってるわ」

 熊田がそう口にした時、穏やかな笑みを浮かべていた千代の表情は硬くなり、千代は唇を結んだ。千代は熊田から視線を外さず、姿勢も崩さない。熊田がその次に何を言い出すのか、構えているようにも見えた。しかし熊田は改まると「出てくれへんやろか、鶴亀新喜劇の舞台に」と強い思いを口にした。戸惑う千代だが、「もっぺん道頓堀の舞台に立った千代が見たい」「竹井千代は道頓堀の舞台女優なんやてみんなに知ってもらいたいんや」という熊田の言葉にはふっと笑みをこぼす。熊田はかつて、芝居に心ひかれた千代に「人形の家」の台本を渡している。千代はその台本をきっかけに字の勉強を始め、ますます芝居に魅了されていった。熊田演じる西川が見せた涙が込み上げているような笑顔を見ると、喜劇役者・竹井千代の根幹を作ったともいえる熊田の強い思いが伝わってくる。とはいえ、千代はすぐに答えを出さなかった。千代は、熊田が置いていった「初代桂春団治」の台本に書かれた“天海天海”の字をじっと見つめていた。


 物語終盤、プロデューサーの酒井(曽我廼家八十吉)らの気遣いも虚しく、当郎(塚地武雅)が何気なくラジオをつけたことで、千代は同じ局内でインタビューに応じている一平の声を聞く。それまで台本に目を落としていた千代はふっと頭を上げ、神妙な面持ちで聞き入っていた。番組が終わると、何事もなかったように再び台本に目をやる千代だったが、視線を台本に落とす直前、どこか安心したように口元が緩んだように見えた。

 最終週初日は、春子を見送った千代が、何かを思う様子で幕を閉じる。千代の真意はまだわからないが、道頓堀への思いはあれど、一平へのわだかまりが解けていないことが、彼女の思いを揺るがせているのだと考える。明日、千代はどのような決断を下すのだろう。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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