『ダイの大冒険』の“償いキャラ”の原点はクロコダインにあり ただのネタキャラではない魅力

 『鬼滅の刃』『呪術廻戦』をはじめ、かつてないほどの盛り上がりを見せているジャンプアニメ。いずれも『週刊少年ジャンプ』にて近年連載されていた、いわば“新作”であるが、数十年の月日を経て、その魅力が再発見されている作品がある。2020年10月から再度のアニメ放送が始まった『ダイの大冒険』だ。

『ダイの大冒険』公式サイトより

 筆者も含めて、ある一定の世代にとって、生涯ベストコミックという評価をする人も決して少なくない『ダイの大冒険』。RPGゲーム『ドラゴンクエスト』を下敷きに、ひとりの少年が世界を救う勇者へと成長していくという物語。ともすればありふれた設定なのだが、主人公・ダイ、ダイと一緒に旅をする魔法使い・ポップにこれ以上ないほど感情移入をし、気がつけば彼らと一緒に喜び、涙してしまうのである。『ダイの大冒険』が心のバイブルだという、ライターの加藤よしき氏はその魅力を次のように語る。

「直撃世代というのもありますが、ジャンプでも屈指の傑作だと思っています。何なら今まで読んだジャンプ漫画でも一番だとすら思っていますね。魅力はいくつもありますが、まず、何より話が最初から最後まで綺麗です。無駄がない。『魔王を倒す』という目標が明確にあり、最終回まで一貫してそこに向かっていくお話自体の面白さがあります。そして、なんといっても登場人物全員がとにかく魅力的なことですよね。個人的に特に凄いと感じているのは、『ダイの大冒険』って、ジャンプ漫画の定番とも言えますが、『敵だったあいつが味方になる』が非常に多いんです。ともすれば、『またこのパターンか』となってしまうのですが、『ダイの大冒険』は、そうはならない。これは敵から味方になるキャラクターの背景が丁寧に描かれているからでしょう。味方になったかつての敵は、『やり過ぎだろ』と思うぐらい“報い”を受けます。ダメージ量でいえば、最初から仲間だったキャラよりも、圧倒的に多いんですよ。さだまさしの『償い』くらい、ひたすら償いのために盾役を買って出ます。なので『これだけ犠牲になってくれるならもう味方だよ』と読者も思わず納得してしまうし、物語も非常にドラマティックになっていくんです。こうした、いわば“償いキャラ立て”が『ダイの大冒険』の魅力だと思っていますね。そして、そんなキャラクターの象徴が“獣王クロコダイン”なんです」

 現在放送中のアニメでは、ダイの出生の秘密が明らかとなり、父・バランがダイを奪うべく、勇者パーティーを襲撃。そんなバランに対して、真正面から対峙するのが、クロコダインだ。『ダイの大冒険』という物語において、とにかくボロボロになる“やられキャラ”であることもあり、ネットでネタキャラ扱いされていたりもするクロコダイン。そんなネタキャラとして扱われていることに異議を申したいと、加藤氏は語る。

「まずはネット上でよく語られることですが、クロコダインはバランの必殺技・ギガブレイクを何度も何度も喰らいます。その度に回復魔法を使えるレオナ姫に治癒してもらうわけですが、こんなにもゲームにおける“壁役”を体現したシーンはないですよね。本当にただ叫んでいるおっさんじゃないということを、この名シーンで多くの方に知っていただきたいです。そして、アニメだけを観ている方にはネタバレになってしまうので、キャラクター名は伏せますが、あんなキャラもこんなキャラも、終盤はダイのために身を挺していきます。みんな先で言うところの“償いキャラ立て”です。でも、その原点はすべてクロコダインにあると思うんです。なんと言っても最初に敵から味方になるのはクロコダインなので。何なら仲間になったと同時に、お腹がヒュンケルのせいでグチャグチャになりますし。言い過ぎかもしれないですが、『ダイの大冒険』に登場するキャラクターの在り方、立て方の上手さを、クロコダインが築いたと言ってもいいと思うんです。あと、こんなに血まみれになるキャラクターはいないですよ。出血量は作中屈指ですよ。だからこそネタキャラにされてしまった部分はあるのですが……。」

 また、戦闘シーン以外でもクロコダインの魅力は無数にあると加藤氏は続ける。