『ドラゴン桜』山下智久の演技は現在に繋がっていた? 作品のバトンは高橋海人へ

 「バカとブスこそ東大に行け」などのインパクト抜群のフレーズの数々と、次々と紹介される実用的な勉強法で、『ドラゴン桜』というドラマが話題を集めたのはもう16年も前のことだ。当時から現在に至るまで、このドラマないしは原作となった漫画に影響を受けて本当に東京大学を目指したという人も少なくないのではなかろうか。4月25日から始まる日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系)2021年版の放送に先駆けて、前作である2005年版の再放送が4月5日からスタートする。

 いきなり余談で恐縮ではあるが、前作の当時高校2年生だった筆者の周囲ではかなり影響力の大きなドラマであったと記憶している。進学校だった高校の友人たち以上に熱量が高かったのは地元の仲間たちで、劇中の龍山高校のシーンの撮影で使われていた学校が、学区の中学校の目の前にあった廃校だったことも相まって、放送期間中にはとにかくその話題で持ちきりだった。場所柄か龍山高校にいそうなやんちゃなタイプが多かったため皆登場人物たちにどことないシンパシーを覚え、自分の将来についてそろそろ真剣に考えなくてはと悩んでいたり。なかなか他のドラマとは違うダイレクトな刺激を受ける稀有な作品であった。

 物語は、経営難に陥った底辺校・龍山高校の立て直しを任された、阿部寛演じる元暴走族の貧乏弁護士・桜木が、その高校を進学校化するという無謀すぎる奇策を思いつくことから始まる。他の教師たちと反発し合いながら、初年度に東大合格者5名を出すと宣言し、落ちこぼれの生徒たち6人に徹底的に東大受験突破のスキルを叩き込んでいくのである。原作漫画ではその勉強法が前面に押し出されていたわけだが、ドラマ化にあたっては、生徒たちの家庭環境にフォーカスを当てるなどドラマ性が高められる脚色が加えられることで“学園ドラマらしさ”が付与される。それでもやはり、ごく一般的な学園ドラマとは一線を画す部分が多々見受けられた。

 たとえば東大合格という明確な目標へ突き進んでいく、“学業が本分”と言われる高校生活の本質を突き詰めていくサクセスストーリーであったり、そこに必要なロジックの探求から精神論までもすべて加えたスポ根ドラマ感であったり。ましてや学園ドラマがこぞって無視しがちな授業シーンに重きを置き、登場人物ひとりひとりの放課後ストーリーとバランスよく絡み合うところもそうだ。奇抜な特別講師たちと対峙しながら成長していく生徒たちの物語に説得力とリアリティが必要不可欠なものとして与えられていくのは、物語として東大を目指しているとはいえ、東大自体、大学受験自体があまりにもリアルに存在しているからに他ならない。また、わずか6人しかいない生徒たちの受験結果が主人公である桜木の去就に影響をもたらすなど、常に生徒と大人が共闘関係に置かれていることも、いい意味で“学園ドラマ”から脱却している部分と言えよう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる