『文豪少年!』で開く“新しい扉” 明日のスターを目指す少年忍者の姿と重なるもの

『文豪少年!』で開く“新しい扉”

 ジャニーズJr.の人気ユニット 少年忍者が、文豪たちの傑作小説を現代的な視点でドラマ化した『WOWOWオリジナルドラマ 文豪少年!~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~』(以下、『文豪少年!』)がスタートした。

 すでに、3月21日に第1話「クモの糸」がオンエアされたが、文豪作品と聞くと「難しいのでは?」「作品を知らないと楽しめないのでは?」と身構える必要は全くないことがわかった。

 『文豪少年!』は原作の小説をただ単に実写ドラマ化するのではなく、「現代的な視点」でドラマ化したというのがポイントなのだ。ドラマは、不思議なブックカフェに少年たちが迷い込むところから始まる。彼らがドアを開けた瞬間から「すでに読むべき1冊が決まっている」と説明する、ミステリアスなマスターを演じるのはイッセー尾形だ。

 彼らが抱える悩みや葛藤を踏まえて読むと、文豪の小説がオリジナルのストーリーとして紡がれていくという。どんな物語が繰り広げられるのか、それはマスターさえもわからない。

 例えば、原作の『蜘蛛の糸』のあらすじは、地獄に落ちた悪党・カンダタが、地獄の底で蜘蛛の糸を掴んでよじ登る。それは、過去に1匹の蜘蛛を救ったことから、お釈迦様が垂らした一本の蜘蛛の糸。これで地獄から這い出ることができる、と必死で登るカンダタ。だが、彼の足元には後から後から多くの罪人が続いてくるではないか。このままでは糸が切れてしまうと焦ったカンダタは「これは俺の糸だ! 下りろ!」と喚くのだが、その瞬間に蜘蛛の糸は切れて、再び地獄へと真っ逆さまに落ちてしまう……というお話。

 一方、「クモの糸」では蜘蛛は出てこない。代わりに“クモ“という名の可愛らしい猫が登場する。主人公の名前もカンダタではなく、神田(黒田光輝)。そして神田は今、地獄のような少年刑務所の中にいる。そんな神田も過去に一度だけ猫を助けたことがあった。そこからクモの糸=ロープをつたって塀の外へと出られることになるのだが、神田もまたカンダタと同じように、その糸を自分だけのものだと優しさを失ってしまう。

 たとえ悪いことを繰り返した人でも、何か1つでもいい行ないをしていれば、地獄から救われるチャンスがある。しかし、そのチャンスも自分の欲だけが先行してしまっては、途中で切れてしまうということ。文豪作品の本質的なテーマを抽出し、さらに現代を生きる私たちにも身近なエピソードとして語りかけるのが、この『文豪少年!』最大の魅力。

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