『半妖の夜叉姫』最終回を迎えなお残る謎 半妖の娘たちが伝えたものとは

 一方、邪見(チョー)はりんの涙でとわたちの危険を察知し、妖怪の刀鍛冶・刀々斎(八奈見乗児)に接触。刀々斎によれば、麒麟丸と半妖の娘たちが戦う場所で天下の名刀「ゆかりのたちきり」が生み出されるという。それが何を意味するのかは分からないが、ゆかり=縁。つまり、縁で繋がっているりんと是露を切り離すことができるのだろうか。

 だが、麒麟丸は犬の大将と並ぶ強さを持った大妖怪であるため、とわたちは全く歯が立たない。総動員で必殺技を使ってもなお、ビクともしない麒麟丸。せつなは麒麟丸の頬に傷をつけることはできたが、反撃にあい、致命傷を追ってしまう。せつなは夢の胡蝶に眠りを奪われ、これまで寝ることができなかった。しかし疲れ果てたせつなの元に、ふわりと飛んでい入る夢の胡蝶の姿が。せつなが穏やかに眠ること、とわを「お姉ちゃん」と呼ぶこと。それが“死”という最悪の形で実現してしまった。

 絶望に際したとわは覚醒し、髪が伸び、額には月の紋が浮かび上がる。父と瓜二つな容姿になったとわが放つのは、殺生丸が生み出した蒼龍破。時を同じくして、もろはも紅夜叉となり、紅龍破を放つ。彼女たちの龍と麒麟丸の戦いは地球を飛び出し、宇宙空間にまで及んだ。まさに最終回にふさわしい、壮大な戦闘シーンだ。しかし、麒麟丸に「西国の大将との死闘以来の戦い」と言わしめるも、とわとせつなは敗北してしまう。

 視聴者の誰もがバッドエンドだと思った最終回だが、すでに発表されているように『半妖の夜叉姫』弐の章の制作が決定した。希望は最後に、殺生丸がとわに託した天生牙。折れてしまい、効力を失った天生牙をとわが使うことでせつなは再び命を吹き返すのか。また、世を末法末世で飲み込み、無に返そうとしている麒麟丸の本当の目的は――。

 数々の謎は残るが、1期を通して半妖の娘たちは目覚ましい成長を見せてきた。その裏にあったのは他者を愛する心、そして大切な誰かを守りたいという気持ち。親世代の殺生丸と犬夜叉もその気持ちの強さで数々の困難を乗り越えてきた。再び、戦国の世で縦横無尽に暴れ回る夜叉姫たちの姿を楽しみに待ちたい。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
『半妖の夜叉姫』
監督:佐藤照雄
シリーズ構成:隅沢克之
メインキャラクターデザイン:高橋留美子
アニメーションキャラクターデザイン:菱沼義仁
音楽:和田薫
アニメーション制作:サンライズ
製作:サンライズ、小学館、読売テレビ
(c)高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2020
公式サイト:hanyo-yashahime.com
公式Twitter:@hanyo_yashahime

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