板尾創路×星田英利の認め合うがゆえの“兄弟喧嘩” 『おちょやん』さまざまな師弟関係
そして、鶴亀家庭劇の笑って泣ける演目は大盛況のうちに幕を閉じ、いよいよ勝敗が決まる日が訪れる。結果、家庭劇、万太郎一座ともに3万人を超える来場者を得たが、わずか15人の差で万太郎一座の勝利となった。
精一杯やり切った千代たちには不思議と悔しさはなかったが、「負けた事実から目をそらして美しい思い出にするんやない」という熊田(西川忠志)が代弁した鶴蔵(中村鴈治郎)の言葉に身が引き締まる。前向きなことは良いことだが、悔しさをバネに己を奮い立たせる熱い想いが今の家庭劇には必要だ。万太郎に対する恨みではなく、純粋な想いから来る「次はわしらが勝つ」という千之助の言葉に団員の想いが一つとなった。
周囲を巻き込んだ師弟対決という名の兄弟喧嘩を終えた後、万太郎と千之助は馴染みの居酒屋で酒を酌み交わす。万太郎は結局、来日したチャップリンと会わなかった。それは世界と勝負する前に、家庭劇に圧倒的な差をつけて勝つことが先決だと判断したからだ。別れの時、千之助が万太郎に渡したハットには卵が仕込まれていた。けれど、千之助がかぶったハットにも万太郎があらかじめ入れておいた卵が。どこまでも素直になれない彼らにとって、それは『丘の一本杉』の父と息子が交わしたハグの代わりなのだろう。血の繋がりはなくとも、食材を無駄にしたことを怒った居酒屋の女将に並んでお尻を叩かれる2人の姿は誰よりも絆の深い兄弟に見えた。
■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/